幻の天然ワカメあります。 三ツ石さんのワカメ
2001年3月3週号
日本で一番風味のよいワカメは鳴門大毛島の大毛浦周辺のワカメでしょう。鳴門海峡の激しい海流、遠浅の海岸、それと吉野川の真水の影響などワカメにとって好条件が重なっているからです。昆布などと同様、ワカメも山や川の影響が大きいのです。森林から運ばれてくるミネラルや栄養素が関係しています。鳴門ワカメも吉野川の真水が通る岸寄りのワカメが風味があっておいしいのです。当然三ツ石さんはその吉野川の流れを変える第10堰の建設に反対です。 1998年5月第2週カタログ表紙でご紹介した丁井さんのワカメも、同じくこの海岸で養殖しています。養殖イカダが三ツ石さんより沖へ出ているため、見栄えが良く、堅くて歯応えのしっかりしたワカメになります。三ツ石さんのワカメはそれより岸寄りの遠浅の上で養殖しているため、より磯の香りのする風味豊かな鳴門ワカメの中でも最高級のワカメになります。
三ツ石さんは天然のワカメも採取されています。今回から、そのめったに食べることができなかった天然ワカメも企画してみました。
ところで、鳴門ワカメには本当にニセモノが多く入り込んでいます。地元漁協の袋に入っているものでさえ、安心できないのです。
淡路島周辺など他産地産を始め、韓国産、中国産も多く、市販のほとんどがそのような味の劣るニセモノばかりであるということは、実に驚きです。
食の欧風化や、このような安いがおいしくないワカメによるワカメ離れが結局、生産者の首を絞めているのです。三ツ石さんのおいしい本家の鳴門ワカメを伝統的食生活復活の強い味方として、ぜひご活用ください。
三ツ石さんの天然ワカメ
大鳴門海峡の大毛島付近では、3月1日~6月20日にかけて天然ワカメが採れます。養殖のなかった昔には、この高い天然ワカメだけしか食べられなかったのです。今では潮流の激しいところで船を操りながらワカメを刈り取る技術を持つ人は少なくなっています。三ツ石さんは、これまでにも時期によっては天然ワカメを出荷していただいたことがありましたが、今回からは正式に企画させていただくことにしました。色、厚み、味が養殖物とは全く違います。文字通り天然物ですので、場合によりますと希望が多いなどの理由で遅配や中止になることもありますので、御了承下さい。
三ツ石さんの養殖ワカメ
三ツ石さんが養殖なさっている大毛島大毛浦は、鳴門ワカメの中でも最高の品質が獲れるところです。三ツ石さんのところでは、収穫時期は2月1日~3月20日頃(漁期は4月20日まで)です。養殖海域も、収穫時期も最良のものです。
種胞子は、ゆっくり成長しておいしい「晩生」を採用しています。成長の早い早生ワカメはおいしくないからです。早生ワカメはひだが多く、くしゃくしゃの形状をしているので、見分けられます。また、種付けに際しても過密にならないよう工夫しています。手間ひまかけて養殖しているから三ツ石さんのワカメはおいしいのです。
一昨年までは浜に上げたワカメは、灰をまぶして灰干しワカメを作り、後日それを水洗いし、さらに天日干して、乾燥糸ワカメにしていました。しかし、その灰に昔、産業廃棄物の重金属を含む活性炭の灰が使われた事件、最近では焼却灰のダイオキシンやヒ素汚染の心配などがあって、海が汚れるということで、現在では竹、ナラ、ヤシガラを除いて(コストが高すぎる)、昨年、灰の使用が禁止されました(三ツ石さんや丁井さんのワカメの灰には以前から心配のない木灰を使ってきています)。したがって現在では、採取されたワカメは浜にあげると海水でボイルし、粉砕塩をまぶして、まず塩蔵生ワカメにします。
乾燥糸ワカメは、この塩蔵生ワカメを塩抜きのため海水で洗い、ついで地下水ですすいだ後は、温風で乾燥しています。この時、直火は汚染の心配があり、使用しません。残念ながら灰を使いませんので、多少の品質低下はあります。
また、今回より新企画としてカットワカメを企画します。ただし、市販のように他産地ものやクズワカメのような安いものでなく、ちゃんと乾燥糸ワカメにしたものを、小さく刻んでいただいて、最高品質のワカメで作ったカットワカメです。
●三ツ石さんの昆布
三ツ石さんは昆布の養殖もされています。5月末~6月に出荷します。北海道産に負けない、よくだしの出る昆布です。可能であれば、スポットで企画します。
●三ツ石さんの養殖かき
水のきれいな内の海で養殖しています。漁協青年部の取り組みとして10年前から取り組んでいます。種は仙台産の良質な種を使っています。広島産は、真白くきれいなのですが、味が薄いので使っていません。出荷時期は12月~3月までです。
*******おいしいワカメの食べ方*******
みぞ汁だけでなく、すき焼き、ラーメン、サラダなどに。
一般市販のワカメの問題
ワカメは海域(海水、海の深さ、真水の影響など)や収穫時期によって、大きく味が左右します。安さだけで取引きされる市販品では、国内他産地のワカメや葉の薄い韓国、中国産を鳴門ワカメとして販売されていることが常習化しています。野菜などでは、原産国表示が当り前になりつつあるのに、ワカメ業界はいまだに無茶苦茶を続けています。そういうなかで、三陸産の方がおいしいという声さえ上がる時代ですが、三陸産は見栄えはよいのですが、粘り気のないワカメです。
市販の塩蔵生ワカメの場合、完成品に、水と塩を交互に入れて3倍にも増量させて、安く見せかけて売っています。細胞の中まで塩が入ってしまい、にがりのないこういう塩を取りすぎるのは高血圧の原因となります。
―文責 西川栄郎―