無農薬大豆であげ作り あらいぶきっちん
2001年6月2週号
パンフルートの干川了さん(カタログ2000年6月第1週参照)のご紹介で、豆腐屋「あらいぶきっちん」の矢沢裕士さんにお会いしました。矢沢さんは、これまで国産大豆で豆腐を作り、影山製油の国産菜種圧搾搾り菜種油(カタログ1999年10月第1週参照)で、あげを作ってこられています。太子屋さん(カタログ2001年3月第5週参照)では、豆腐はオルター向けに特別に井村さん(カタログ1999年10月第2週参照)の無農薬大豆を使っていただいていますが、あげについては他の製造分との関係で、残念ながら国産大豆に停まっています。また最近影山さんの菜種油から、石橋製油の非遺伝子組換えオーストラリア産菜種、圧搾一番搾りへレベルダウンしました。オルターにとって、あげの改善が課題でしたので、矢沢さんに井村さんの無農薬大豆に切替える提案をさせていただいたところ、快諾を得ました。また水もハイパークラスター(カタログ2000年4月第3週参照)を使っていただくことにもなりました。
矢沢さんは、もともと影山製油の次男の影山治雄さん(現在神奈川県で「おかべや」、小田急百貨店の千円豆腐で有名)の指導で、豆腐屋を始められました。だから、最初から影山さんの菜種油を使われていたのです。影山製油所は、かつて豆腐も作っておられたのです。表作の大豆、裏作の菜種を加工しておられたのです。
矢沢さんは、京都「使い捨て時代を考える会」の安全農産供給センターで、元スタッフをなさっていました。学生時代、同会に出会い、何か食べもの作りに取組みたいと思っていたところ、代表の槌田劭先生にまずスタッフになって道を探せといわれたそうです。やがて同会の後押しと影山治雄さんの指導で、15年前の1986年に豆腐屋を始められたのです。
店名の「Alive Kitchen」(生き生きと活気のある台所)の由来は、若い頃ご夫婦でニューヨークを旅行中に、たまたま入った菜食のレストランで、明るい雰囲気とメニューに魅せられ、日本に帰ってやりたかった店の屋号にと決めていたということです。矢沢さんは「豆腐作りはシンプルで、ごまかしがきかない。マニュアル通りいかず、毎日毎日新鮮で飽きることがない。苦労と楽しみは裏返し」と語っておられます。
あらいぶきっちんの無農薬大豆あげ(あげ・寿司あげ)
―原料―
・無農薬大豆…井村さん (カタログ1999年10月第2週参照)
・にがり…伊豆大島海精にがり
海水から塩を採取したあとの残母液で、本来のにがりです。うまみのある豆腐ができる が、凝固させるには高度の技術が必要。
・菜種油…影山製油所、国産菜種圧搾一番搾り菜種油 (カタログ1999年10月第1週参照)
・水………おいしい乙訓の水を、さらにハイパークラスター(カタログ2000年4月第3週参 照)で活性水にして使用。
化学にがり、消泡剤、品質改良剤、酸化防止剤、栄養強化剤、キャリーオーバーの添加 物など一切の化学薬品を使っておりません。
―作り方―
・大豆をタンク内の活性水に一晩浸漬。
・グラインダーで大豆をすりつぶして呉にする。
・圧力釜で煮る。
このとき消泡剤を使いません。目の細かい網で泡をすくいとります。その分豆乳量が減ってしまい、歩溜りは悪くなっています。
・豆乳とおからをスクリュープレスで分離します。
スクリュープレスは最新の密封型の脱水機で、空気に触れずに分離するので、上等の豆乳がとれ、衛生面でも優れています。従来の循環タイプの機械だと空気に触れるので、酸化しますし、衛生面でも劣ります。
・桶に受けた豆乳に櫂(かい)を使ってにがりを合わせて、あげ生地を作ります。
・型箱で水切りした揚げ生地を2層式のフライヤーを使って2度揚げを行います。
最初は120度で15分間揚げて生地を展ばします。次に180度で15分間揚げて完成です。
揚げの生地は低めの濃度で作った薄い豆乳を使って固まらないように、自然にじわっと固めて、水分を切ったあと徐々に重石をおいて油圧プレスで水を切り、約1cmに作ります。それを冷蔵庫にストックして使っていきます。このとき使うふきんは、蛍光増白剤の汚染の心配のない未晒しです。洗濯もカセイソーダーで洗浄して、合成洗剤などは使いません。
使い終わった油は、その都度炭と紙を使って劣化や水分を防いで保管しています。
揚げは1時間に100枚程度の手揚げです。その日の生地の出来を確かめながら、1枚1枚丁寧に揚げていかれます。だから理想的な、おいしいあげができるのです。市販のように薬品で膨らませて皮しかなく、すかすかで、まずくて、油で胸やけするようなあげではないのです。
あらいぶきっちんの豆腐(もめん豆腐、絹ごし豆腐、厚あげ、絹厚あげ、豆乳、おから)
―原料―
・大豆…今年年内いっぱいは滋賀県産の大豆と井村さんの大豆の混合です。
開店当時より国産大豆をずっと使われてきました。それは輸入大豆より蛋白質量におい て豆腐作りには優れていることと、ポストハーベストのことを考えると輸入大豆を使う 気にはなれなかったからということです。
来年より今秋収穫予定の井村さんの無農薬大豆に切替えます。
おぼろ豆腐は井村さんの無農薬大豆です。
・にがり…同上
―作り方―
基本的には上記のあげ生地までの工程と同じ。
・・・・・一般市販豆腐の問題点・・・・・
カタログ2001年3月第5週参照。
―文責 西川栄郎―