高野豆腐は女性の味方
2001年12月4週号
以前から、高野豆腐の生産をお願いしていました玉椿豆腐の小林貞俊さんが、今春若くして急死され、後継者も育てておられなかったために、オリジナルの高野豆腐がなくなって困っていました。
奈良よつ葉牛乳を飲む会の清水章子さんより、しなの食糧㈱で何団体か共同で、無農薬大豆の高野豆腐を開発したいとの申し入れがあり、一緒に取り組むことにさせていただきました。
しなの食糧㈱(浅田金作社長)は、全国4位(シェア3%)の会社ですが、いち早く遺伝子組換え大豆追放の姿勢を明らかにされたため、いろんな消費者団体が委託加工するようになりました。消費者の要望に対して、小回りをきかせていただけるのです。私たちの提供する原料でも、高野豆腐を作っていただけることになりました。
しなの食糧㈱でのオリジナル豆腐
※市販のものとはもどし方が違いますのでご注意ください。
いまどきの柔らかい高野豆腐ではなく、昔ながらのきっちりした高野豆腐ですから、熱湯でもどしてください。
しなの食糧では、輸入大豆、凝固剤、膨張剤添加の高野豆腐から、自然農法産大豆、無添加のものまで委託先の団体、会社の要望に応じて、何種類もの高野豆腐を作っています。私たちのお願いする高野豆腐は、それらの中でも最高のものを作っていただきます。
◆原料
・無農薬大豆
オルターの豆腐にも使っている金沢の井村さんなどの無農薬大豆を使っていく予定です。ただし、第1回目製造の今回は新物の大豆しかなく、新物では、安定的に生産するのが難しいため、ヒネの在庫がある高生連の栽培時無農薬大豆を使います。表作の水田で、除草剤を1回使用しているものです。
・海水にがり
ゆくゆくはタワー塩の海水にがりを使っていただく予定です。しかし、まだ技術的に確立していないため、今回は中国産の塩田にがりを使用していただくことになります。
・水
豊富な湧水を利用されています。
消泡剤、膨軟剤など、一切の食品添加物を使っていません。
◆製造方法
①無農薬丸大豆を、水に約18時間浸漬する。
②それを粉砕して呉を作る。
③呉を炊く。
④おからと豆乳に濾過、分離する。このとき消泡剤を使いません。
⑤豆乳ににがりを加える。
⑥型箱に入れて、150分圧密する。
⑦水槽に入れて、約3時間冷却する。
⑧切り分けて、約2時間で凍結する。
⑨-3℃の冷凍状態で20日間熟成する。
⑩水で解凍し、脱水する。このとき、膨軟剤加工をしない。
⑪乾燥し、出来上がり。
市販の高野豆腐の問題点
原料の大豆が、ポストハーベスト農薬の心配のある輸入大豆です。高野豆腐業界では、遺伝子組換え大豆は一応使わないことにしています。しかし、5%未満の混入まで排除されているかどうかはわかりません。
固めるにはにがりではなく、塩化マグネシウムや塩化カルシウムなど凝固剤を使います。これでは美味しくなるわけがありません。製造スピードや歩留りを上げるため、消泡剤を使っています。消泡剤は、シリコン樹脂など約8種類の化学薬品でできています。ふわふわの感触を出すため、膨軟剤も使っています。
昔ながらのコシのある高野豆腐が明らかに味があり、おいしいのですが、最近はふわふわのわけのわからない味のものを高野豆腐だと思い込まされている消費者が多いのです。今の消費者は、高野豆腐のもどし方も知らないのではないかと思います。ちゃんとした昔ながらの高野豆腐は、ちんちんと沸かした熱湯でもどすのがよいでしょう。
膨軟剤には、以前アンモニアが使われていました。しかし、臭みが残るので、もどすときにわざわざ別に煮る必要があったりして、今ではこの方法で作るメーカーはなくなっただろうということです。それに代わって、重曹が一般的に使われています。しかし、この重曹がくせもので、通常はリン酸塩(約20種類あり)などが配合された、いわゆるカン水のようなものを「重曹」と、あたかも重炭酸ナトリウムである重曹と紛らわしい呼び方で業者が販売し、メーカーがこれを使っているのです。
純粋な重曹だけならまだましなのですが、リン酸塩が配合されているものは、カルシウムを体内から奪ったりするので有害です。この膨軟剤を使用しないと、JASが使えないので、JASマークのある高野豆腐はだめなもの、ということになります。
高野豆腐の歴史
今を遡ることおよそ800年前の鎌倉時代、高野山の僧侶たちの手によって造られたのが「高野豆腐」。
凍った豆腐を、湯もどししてまた凍らせては乾燥するだけの素朴なものでしたが、肉、魚などの動物性食品を一切禁じられ、日夜厳しい修行と勉学に励む若い僧侶たちのパワーを支える、貴重なタンパク源でした。
保存のきく高野豆腐は、精進料理に欠かせない食材として、やがて江戸時代の天保の飢饉の頃から、次第に近畿から全国へと広がっていきました。片や、東北や長野地方にあった凍み豆腐の伝統とも重なり合って、明治時代には人工冷凍法などの近代製法が出現し、現在に至る新しい「高野豆腐」の時代を迎えます。今では高野山の土産店で、しなの食糧の高野豆腐が並べられている時代となっています。
有害な添加物を使わず、優れた栄養価がギュッと詰まった「高野豆腐」は、世界に誇る日本の食品です。
安くて手軽、おまけに機能性の高い高野豆腐は食べなきゃ損。女性の一生に強い味方です。
◎貧血を防ぐ。
女性に不足しがちな鉄分が豊富。毎月生理で鉄分を奪われる女性は、男性の20%増の鉄分を摂らないと貧血になります。無農薬の緑黄野菜、鉄鍋と並んで、高野豆腐も女性の強い味方です。
◎妊娠・出産・授乳を応援。
天然のままの大豆レシチン、良質なタンパク質、豊富なカルシウム、鉄をバランスよく含んでいるので、妊娠、胎児の細胞の生成、出産、授乳にとって、大変役立ちます。
◎育児を応援。
低カロリーで、ビタミン、ミネラルが豊富。肥満を防ぎ、免疫力を高め、子どもの丈夫な骨格だけでなく、母子の精神や神経を安定させ、健康な育児に役立ちます。
◎美容と健康に役立つ良質のダイエット食品。
大豆レシチンは脂肪を分解するので、ひきしまったプロポーションを作ってくれます。ビタミンEは血行をよくし、老化を防ぎます。
◎成人病予防。
大豆イソフラボンは、コレステロール低下作用や、高血圧、動脈硬化、糖尿病など成人病を予防してくれます。
◎更年期障害を和らげてくれます。
大豆イソフラボンは、植物エストロゲンとも呼ばれ、女性ホルモンの分泌低下によるいろいろな心身の不調、いわゆる更年期障害を和らげてくれます。
◎骨粗しょう症の予防。
高野豆腐のカルシウムとイソフラボンの効果で、骨のカルシウムが血液中に溶け出すのを防ぎ、ホルモンの効果を補います。
◎ダイオキシン排泄効果
高野豆腐には食物繊維の1.5倍近い、ダイオキシン類の排泄効果があります。
◎発ガン抑制効果
発ガンを促進する「酸化脂質」、「リン脂質過酸化物」の生成を抑制する効果が知られています。
-文責 西川栄郎-