細川ダムを止めた木頭村からおいしい山の湧水
2000年12月1週号
徳島県木頭村(きとうそん)は、人口1900人の山村。瞬間降雨量日本一、年間降雨量四国一の記録を持っています。その村に1971年にもち上がった細川内(ほそごうち)ダムの建設に、村民の7割が反対。ダム反対を公約に、1993年に当選した藤田恵村長を先頭に、1997年計画一時休止、そしてついに今年、その計画の中止を実現しました。
ダムは河川流域の生活や自然環境、生態系を破壊するだけでなく、崩壊事故が相次ぎ、群発地震を誘発したり、当初予想より早く堆積土砂などで寿命が尽き、海浜の砂の流亡などの2次的被害を生むということで、各地で反対運動が起き、次々と計画が中止されています。日本がダム建設のお手本にしてきたアメリカでは、内務省開墾局のダニエル・ビアード総裁(当時)が1994年、「米国ではダム建設の時代は終わった」という宣言を出しました。このことに代表されるように、ダムに頼らない水政策は世界の潮流です。現在ではダム計画は、公共事業の名を借りた、土建産業による税金の食いつぶしといっても過言ではないのです。ダムという公共事業は、補助金に麻薬のようにむしばまれる村の土建行政を生み、人々は額に汗して働くこともばからしくなって、土建の仕事の末端で吸った税金のおこぼれにあずかるという人間そのものの荒廃まで作り出しています。逆に反対すると、国や県などの報復的な予算いじめに会うのです。
木頭村では1996年、自立のため「ダムに頼らない村おこし」として、第3セクターで「(株)きとうむら」(藤田恵社長)を作りましたが、世の中には悪い人たちがいるもので、この運動を喰いものにした人々がいたのです。そのため、大きな赤字をかかえるはめになり、藤田村長の再選に悪影響が懸念されているのです。木頭村では、生態系を破壊しない小型水力発電機など、エコロジーなエネルギーのモデル作りにも取り組んでいます。
木頭村がダム反対の砦として、いつまでも語り継がれるためには、(株)きとうむらの自立のための取り組みが成功しなければなりません。そのため、東京でエコロジーショップガイアを設立した日野雄策氏が、(株)きとうむらの専務に招かれ、その建て直しに取り組んでいます。その仕事のひとつが「木頭村の山の湧水」です。
~地下水でなく、あえて湧水にこだわる木頭村 山の湧水(わきみず)~
▼名水百選の原水▼
名水百選に選ばれた剣山系湧水。大森山(標高1093m)の中腹(標高500m)の水源地から湧き出しています。それを自然取水しています。pH7.8と飲用に最適で、大腸菌もなく極めて清浄な水です。非常においしい水で、活性力も高い湧水です。水質検査の結果、ミネラルバランスなど体によい基準とされている8項目の点数合計が136点で、市販の有名なミネラルウォーターの102点、欧州から輸入したミネラルウォーターの75点をはるかに引き離すという驚異的な結果が出ています。
フランスとスペイン国境のアルプス山脈の麓に「ルルドの奇跡水」という有名な水が湧き出しています。このルルドの村は長寿村としても有名で、ローマカトリックの総本山バチカン教皇からも「奇跡を起こす水」として認定されています。木頭村にも長寿の老人が多く、四国各地から「木頭村は長寿村」という評判が生まれています。
地下水の過剰なくみ上げは、自然生態系の命である水脈を変えるだけでなく、地下水汚染の原因にもなりますので、あえて湧水にこだわっています。
原水:この写真の垂直500m上の地点から湧き出しています。
▼低温殺菌で充てん▼
湧水地点からパイプで1.5km離れた工場に運ばれた原水を濾過(1ミクロンフィルター)で異物除去したあと、低温殺菌63℃30分を行ない、0.3ミクロンフィルター濾過、さらに炭素濾過、0.1ミクロンフィルター濾過をして、ガラス素材のパックに充てんしています。賞味期限は一応1年ですが、実際にはもっと長くもちます。非加熱でも可能なのですが、反対運動を陥れる勢力に気をつけて、低温殺菌にしています。また充てん後はパックをすぐに水につけて冷却しています。
▼画期的なガラス蒸着エコパッケージ入り▼
ペットボトルはリサイクルコストが高く、ほとんど再利用されないまま放置されているのが現状です。アルミを使ったLLパック(リサイクルもできません)では、アルツハイマーの原因となるアルミや、特殊な接着のりの成分が溶出します。そのため、割高ですが、あえてより安全な「紙-ガラス蒸着-ポリエチレン」というパックリサイクルも可能なガラス素材を蒸着した新素材パックを使っています。ビンと違って軽くて丈夫で割れにくいので、非常用に保管しておく容器としても優れています。非常用として1箱(1.8LX6本分)を常備されておくと、急な災害時に役に立ちます。冷蔵庫にも入る1.8Lパックです。
また、飲んだ後も、携帯用としても優れていますので、ハイパークラスターの水やお茶をつめて、水筒がわりに使用できる容器なのです。やがて使い終わったら、通常のパックリサイクルに出していただいてよいのです。
この紙パックの原料パルプは針葉樹パルプですが、間伐材や製材時に出る端材、木くずを主原料として、森林資源を有効に活用しているものです。
この水が軌道にのれば、リユースビンの使用も検討したいと考えています。
市販のミネラルウォーターの問題点
地下水をやたらとくみ上げることは、生態系を破壊することにつながっています。だから木頭村では湧水にこだわっているのです。市販によっては、安く見せるためその地方の水道水をつめているものもあります。
外国製のものは、カビ発生のトラブルも起きています。
加熱処理も低温殺菌を超えると、水の味が変わってしまってまずくなります。ほとんどの市販のミネラルウォーターがまずいのはそのためです。
ペットボトル容器の場合、ゴミ問題が発生しています。
―文責 西川栄郎―