ワカメ選びはこんなに難しい

1998年5月2週号

 

鳴門ワカメは質の高さでは国内随一といわれています。なぜなら海流の激しい鳴門海峡でできるからです。しかし、市販の鳴門ワカメの約80%は、韓国産や他産地産といわれています。鳴門でとれる鳴門ワカメを手に入れるのがまず難しいのです。
 鳴門でお土産に買うワカメも、信用できないのが現実なのです。鳴門ワカメより三陸ワカメの方がおいしいなどとの評判も出ていますが、真相はニセモノを食べての評価なのです。次に、同じ鳴門でも海峡本流や小鳴門海峡の潮流の激しいところのものが良質です。また、収獲時期も2月、3月の若芽のときが良質です。4月以降になると「バカメ」になってしまいます。

 灰干しワカメに使う灰がまず問題となります。昔、産業廃棄物の石炭灰や活性炭灰を使って鉛、カドミウムの重金属汚染が問題となったことがあります。
 木灰を使うのがまず、前提です。糸ワカメは、この灰干しワカメを海水で洗って天日干しにして作りますが、手間を省くため真水(水道水)で洗う場合が多いようで当然品質は低下します。
 塩蔵生ワカメは、生ワカメを浜で海水でゆでて塩蔵で水を切ったあと、水温保存しますが、このときのまともなワカメは塩分22%くらいです。しかし、市販されている生ワカメの塩分は実に51%を超えているものがほとんどなのです。
 なぜなら、塩蔵生ワカメに水と塩を交互に次々と入れていくと、なんと3倍にもふやけ、それを安くみせかけてスーパーなどで売っているのです。これらのワカメは塩がワカメの個々の細胞の中にまで入り込み、パンパンに膨れているのです。当然洗ったくらいでは塩は抜けず、高血圧の原因となってしまいます。
 まともな生ワカメは外側の塩をとれば、すぐ塩抜きができ、少しのワカメでたくさん料理に使えるものなのです。

丁井俊さんのワカメは、鳴門ワカメの中でも特に優れています。
その理由は・・・

①ワカメの胞子(種)からの選別をしています。おいしい良質なワカメの胞子を独自に栽培して、丁井の胞子と呼ばれています。
②漁場地域の中でも、一番潮の流れの速い場所で養殖しています。人の嫌がる一番遠い沖合いでやっていますから、時間もかかるし、波も荒く、作業もその分危険で、大変なのです。全て良質のワカメを作るための苦労です。
③種の量、海面からの位置など養殖技術も天候や海の様子で調整しています。
④収獲時期は2月と3月に行い、4月以降の暖かくなったときには獲らないようにされています。
⑤灰干しの灰は滋賀県より購入。その灰を洗って糸わかめを作る際には、海水で洗うことを守られています。乾燥過程でも温度、風のタイミングも細やかに仕上げられています。
⑥塩蔵生わかめは一切増量なしです。
 こうして色鮮やかな、食感のよい、香りのよい丁井さんのワカメが出来上がっています。値段を高く感じる人もいますが、こういうワカメが結局はお得なのです。

 ワカメには動脈効果や制がん効果があるといわれるアルギン酸やフコイダンなどの酸性多糖、コレステロール値を下げるフコステロール、EPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸があり、成人病予防に優れた食品です。海藻をたくさん食べましょう。

-文責 西川栄郎-

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