飯尾醸造の無農薬の新米だけを原料とする「富士酢」物語
1998年11月2週号
「美味しんぼ 第397話」(雁屋哲)や今年4月30日放映「どっちの料理ショー」で紹介されてご存知の方も多いと思います。天橋立で名高い丹後の宮津にある飯尾醸造の創業は明治26年、現代の飯尾毅当主は4代目になります。無農薬米を使い始めたのは3代目がS39年からで、当時DDTやエンドリンなどの農薬が問題となっていたのがきっかけです。
無農薬有機栽培米作りは地元の丹後半島山あいの上流域の千枚田で、4代目の母方の里(竹本さん)が中心となって、現在27戸の生産者で取り組んでいらっしゃいます。お米は全体の1/3が手植え、なるかけも行うなど昔ながらの作り方です。最近では、鳥取大学農学部の津野幸人先生の紙マルチなどにも取り組んでいます。米の品種は、コシヒカリ(6割)と五百万石(酒米、4割)。その無農薬新米を完成した富士酢1L当り200gもの量を使っています。一般の大手の米酢は1L当り40g以上で米酢の表示をしています。米だけでお酢を作ると最低120g/L米が必要なので、その不足分はもちろん混ぜものです。 富士酢がこれら米酢と比べて酸度も濃く、香りも濃いのでうすめてものびが良いのは当然です。
無農薬有機栽培米作りは地元の丹後半島山あいの上流域の千枚田で、4代目の母方の里(竹本さん)が中心となって、現在27戸の生産者で取り組んでいらっしゃいます。お米は全体の1/3が手植え、なるかけも行うなど昔ながらの作り方です。最近では、鳥取大学農学部の津野幸人先生の紙マルチなどにも取り組んでいます。米の品種は、コシヒカリ(6割)と五百万石(酒米、4割)。その無農薬新米を完成した富士酢1L当り200gもの量を使っています。一般の大手の米酢は1L当り40g以上で米酢の表示をしています。米だけでお酢を作ると最低120g/L米が必要なので、その不足分はもちろん混ぜものです。 富士酢がこれら米酢と比べて酸度も濃く、香りも濃いのでうすめてものびが良いのは当然です。
お酢作りの工程は一言で言うとまず米酒を作り、それを米酢にするわけです。飯尾さんところでは、酢もと醪という酒までに約50日、その純米酒を表面発酵法でお酢にするのに3~4ヵ月、そして8ヵ月以上熟成するので、仕込みから完成まで1年1ヵ月以上かけています。そのひとつひとつの工程に熟練した職人の手と勘を必要としています。大手メーカーのお酢作りは、速醸法で2~3日で作り上げています。良心的なところでも1ヵ月前後がほとんど。速醸法だと「ツーン」と刺激臭のある、こくのない米酢となってしまいます。これは揮発性の高い酢酸が多く出来るからです。それに対して富士酢では、乳酸、グルコン酸、コハク酸など不揮発酸が多く出来、その分まろやかでこくがあるのです。こういう発酵臭独特の香りが苦手な人もいますが、そのような人は醸造用アルコールから作ったアルコール酢(安物)でも飲んでいただくしかありません。酢っぱければ酢と思い込んでる人、本来お酢は酸っぱいのは当たり前だが、おいしいものなのです。市場の大半を占める大手の量産酢は味もクセもないものです。
◆飯尾醸造の玄米酢の話
ちまたの薬局などで「黒酢」と称してえらい高い値段で売っている玄米酢がありますが、なかには材料のお米にこだわっているわけでもなく、1ヵ月の醸造期間で作ってしまっているものも売られています。飯尾さんのところのように、無農薬玄米を富士酢と同様の方法できちんと醸造した玄米酢の方がはるかにお推めできるわけです。
◆富士酢の保存
開栓後は栓をして冷暗所へ。原則としていつまでも変敗の恐れはありません。開栓のままだと、まれに空気中の不良酢酸菌(有害ではありません)が入って食味を低下させることがあります。
◆すの効用
酒道の達人は必ず酢の物を一品、肴に加える。あるいは、盃一杯の酢を5~6倍にうすめてひそかに飲んでおく。酢には二日酔いを防ぐ働きがある。酢の効用として、食欲増進や防腐・殺菌効果もよく知られている。最近では動脈硬化や高血圧の予防に有効であることも分かってきた。また脂肪が細胞にたまりにくくする作用も知られている。しかし、酢の飲みすぎも注意すべきで、通常の食事から摂る程度にするのがよく、わざわざ酢だけを飲むようなことはつつしむべきです。
一般市販の米酢の問題点
神前に供えた酒を盗み飲みしたら酸っぱくなっていた。・・・これが酢発見の最初といわれています。しかし今の酢はまともなお酒から作っていません。合成氷酢酸(石油化学工業の合成アルコールから作った合成酢酸)に味の素などを入れた合成酢(市場の約2%)は論外としても、市販の米酢には様々な問題があります。一般に米酢の原料米は、くず米(米の1/15の値段)や他用途米(古米や古古米)。カドミウム汚染米や輸入米(ポストハーベスト農薬)など安い米は何でも加工にまわされてきました。さらには、白糠(吟醸酒を作るときに40%精米を行いますが、その糠もお酢の原料にまわっています。ディスカウントの紙パックの酒の原料でもある)や醸造用アルコール(砂糖工業からのさとうきびの廃糖蜜やじゃがいもでんぷんの糖化物などを原料としている。ほとんど輸入物。かなり以前は有害物を含むパルプ廃液まで原料になっていました。これだけではお酢にならないので、カリウム、マグネシウム、酵母エキスも添加される)など原料コストは限りなく安い。
富士酢のように無農薬米どころか、まともな米が原料になっていないのです。それどころか大半の市販の酢は、穀類を原料としているので米酢の表示は酢1L当り米使用40g以上でできますが、米だけなら120gは最低必要なのにその差は、以上のような副原料使用にからくりがあるのです。従って、のびの悪い、こくのない
米酢がいかにも上等なお酢の顔をして店頭に並んでいるのです。また醸造方法も速醸法(全面発酵法)が一般的に酢酸主体のツーンとくるお酢になってしまっています。
―文責 西川栄郎―