ベビーミックス野菜を休耕地耕作のシンボルに
2009年6月1週号
いろんな野菜の幼葉を収穫する、ちょっとぜいたくなサラダ野菜。
食べる人を元気にします。
●抗酸化力が期待
オルターの会員でもある中本勝己さんは、オルターが移転先として計画を進めている大阪府南河内郡河南町において、オルターが提唱するオルターワールド構想に協力していただき、休耕地において自然農法でベビー野菜栽培に取り組んでいただいています。
各種の野菜をまだ12cmくらいの幼菜の段階で収穫するベビー野菜は、通常のように大きく成長させた野菜と比べて、タンパク質、ミネラル、ビタミンなどの含有量が断然多い事が知られています。更に有機栽培で育てられ、高い抗酸化力を有するベビー野菜は、活性酸素由来の変性疾患、すなわち様々な成人病対策の一助として期待できます。したがって、生野菜をそのまま食べるサラダ用の野菜として最適といえます。
収穫する際、きわめて手間がかかり、勿体ないくらい贅沢なサラダ野菜ですが、食べる人を元気にしてくれる事を考えると、生産者の皆様にそれだけの手間をかけていただく事に意味があると考えます。
食べ手側としては、柔らかくておいしい、手間がかからずゴミも出ない、ありがたいサラダ野菜です。大きな野菜の様にカットする手間が不要なので、水洗いの際にビタミン類などの栄養が流れ出ません。一枚一枚の葉がカットされていないため、視覚的にも美しく、料理に彩りを添えてくれます。
●大阪府下の農業を元気に
都市近郊の農業は都市化にのまれ、担い手の老齢化、後継者難、更には国や行政の基幹的な農業政策からも見放され、消費地がすぐそこにあるにもかかわらず疲弊しています。見栄えや商品価値をいたずらに優先する市場の中では、年老いて、農薬をこまめに散布するいわゆる慣行農業を担うのが困難になった農業者は、耕作を放棄してしまっています。
オルターが現在移転先として計画している河南町でも、大阪府企画調整部統計課の農林業経営体調査報告書「2005年農林業センサス結果概要」によれば、水田20,264アールの14.21%が、畑820アールの25.48%が何も耕作されずに放棄されています。
オルターとしては、オルターワールド構想(会員集会などで報告してきているもの)の一環として、これらの休耕地や耕作放棄地を多くの人々の協力で有機農業で耕す計画を進めています。市場価値(商品価値)ではなく、使用価値(安全・おいしい)を認める消費者が増えれば、素人同然の新規就農の若者や定年労働者、障害者の皆さんでも有機農業で耕作に参加する事が可能です。
中本さんにはこのプロジェクトの重要な一翼を担っていただく予定です。オルターの休耕地耕作作戦とほぼ同様の趣旨で「自産自消」家庭菜園プログラムを進めている(株)マイファームとも協力関係を進めています。農業を元気にし、緑を取り戻すオルタービジョンを更に発展させていきたいと考えています。これは2006年に成立した有機農業推進法の精神でもあります。
●生き甲斐のある仕事に定年労働力を
中本さんは54才まで繊維関係の仕事で海外を飛び回り、貿易の第一線でストレスだらけの忙しい生活を送ってきました。そのため生命が危ぶまれるほどの大病で半年間の闘病生活を余儀なくされました。病気は人生観の転機をもたらし、食べものの大切さ、自然の素晴らしさに気付かされ、EM農法にも出会いました。そしてついにそれまでの仕事を辞める事になりました。
最初は10坪ほどの市民農園から出発し、それが60坪、更に350坪、1000坪と農地を広げてきました。オルターの生産者見学にも参加されました、そして今やっとオルターへ出荷していただく自信がつきました。今年65歳の中本さんには60歳を超える仲間が5人、50歳代の仲間が1人、30歳代も1人います。定年パワーでますます休耕地を耕していく計画です。
中本さんは荒廃している竹やぶの手入れも始めています。来年にはオルターへのタケノコの出荷を予定しています。更にはタケノコの水煮の工場、野菜などの漬物工場へと夢が広がっています。オルターの足元での新鮮な野菜の生産基地が誕生します。ベビー野菜はその手始めに過ぎません。
中本勝己さんのベビーミックス野菜
輸入ものと比較して、まず鮮度が違います。土耕栽培なので、水耕栽培のものと比べて香り、味ともに濃厚で野趣にあふれています。
●栽培方法
露地で自然農法です。無農薬栽培(オルター基準☆☆☆)です。肥料(マルチ材として)は大和川の支流・石川の河川敷から刈ってくる草です。ベビー野菜の種子は当初、購入種子を使わざるを得ませんが、今後は自家採種をめざします。
●害虫対策
とくになし。
●栽培品目
小松菜、サラダ菜、チンゲンサイ、葉大根(すぐり葉、ぬき葉大根)、二十日大根(ラディッシュ)、ホーレン草(サラダあかり)、レタス(チマサンチュ、ちりめんチシャ)、サニーレタス(赤ちりめんチシャ)、サラダ水菜(京水菜)、ルッコラ(ロケット)、べか菜(山東菜(はくさい)の一種)、セリフォン(からし菜の一種)、赤大葉高菜、体菜(チンゲンサイのこと。タイサイ、パクチョイともいう。アブラナ科)など。
その折々の季節・気候で旬の野菜が変わりますので、どんなベビー野菜が入っているかはお楽しみ。数種類の野菜が入っています。
●ベビー野菜の食べ方
①ベビー野菜はボウルに入れ、冷水に放してパリっとさせる。
②それらをザルにあけ、水気を切って、器に盛る。
③ドレッシングの材料をボウルで混ぜ合わせる。
④③を②にかける(お好みでレモンをかけても良いでしょう)。
⑤彩りにトマト、また焼き目をつけた2cmくらいのパゲットを添えてどうぞ。
●市販のベビー野菜の問題点●
ベビー野菜は人気があり、インターネットでもいろんな生産者が出荷しています。しかしベビー野菜は畑の栄養分をよく吸収しますので、農薬や化学肥料の使用は厳禁です。農薬が危険な事はいうまでもありませんが、化学肥料を使った畑のベビーリーフは化学肥料由来の硝酸態窒素などがあり、苦くてとてもサラダなどにおすすめできません。
輸入もののベビー野菜も出回っていますが、栽培情報が十分に確認できない事や鮮度にも問題があります。
―文責 西川栄郎(オルター代表)―