井村さんの有機大豆と有機小麦を使った醤油 金沢農業(3)
2003年5月5週号
今回のご紹介は、「金沢大地」が「中初商店」および「丸島醤油」に委託加工して、井村さんの有機大豆と有機小麦で作った醤油です。オルターでは「丸中醤油」でも井村さんの大豆に切りかえるよう、一部で仕込みを始めていただいているところです。
金沢大地の醤油
製造 有機JAS認証工場である丸島醤油㈱での委託加工:
《 原 料 》
大豆…井村さんの有機大豆
(淡口)エンレイ、フクユタカ
(濃口)エンレイ、タマホマレ、フクユタカ、タチナガハ
小麦…井村さんの有機小麦
(淡口)農林61号
(濃口)農林61号、シロガネ
塩……天日塩(オーストラリア産)
《 製造方法 》
丸大豆 丸小麦
①水浸 ①炒り
②蒸し ②割砕
↓ ↓
・・・・・・
↓
③混合、種麹
④製麹室3日目で出麹
⑤塩水で杉樽に仕込む
⑥熟成
⑦圧搾
⑧火入れ(酵素が死滅しない程度に)
⑨醤油汁ビン詰め
※食品添加物などは使用しておりません。
有機醤油
淡口:熟成7ヶ月、火入れ。色が濃くならないように、短期醸造になっています。
濃口:熟成1年7ヶ月
醤油の見分け方
・一般に炎や焼鉄に触れさせて、焦香のよい醤油が良い醤油である。
・少量を白色の陶器に入れて傾けてみて、赤色の明確なほど良いとされている。
・番茶に醤油を入れると 赤身が出るのが良い醤油。
どす黒くなるのが悪い醤油。
・旨味の少ない食材(例えば刺身、豆腐、漬物)などにかけて、食材の持ち味を引き
立てる醤油は良い醤油とされている。
・醤油の香りはすっきりとした素直な香りが最高である。
・30分以上静置したガラスのコップの水に醤油を一滴落とし、静かに底まで到達
できる醤油は良い醤油で、途中で水と混ざり合うのはあまり良くない醤油と昔
からいわれている。
・古式天然醸造醤油は、永年代々食べ続けられた経験から、一番安全であるといわ
れている。
有機田舎醤油
委託加工は中初商店
他県の例に漏れず、石川県も醤油会社が作業工程の集約、共同化を進めてきましたが、中初商店さんは、頑なに自社工場加工を貫かれています。昔ながらの製法を守り、個性豊かな醤油造りを続けています。少量でよく伸びる醤油として好評です。
原料
大豆…井村さんの有機大豆(エンレイ)
小麦…井村さんの有機小麦
南部小麦チクゴイズミ
塩……天日塩(メキシコ産)
製造方法
前述の工程と基本的に同様。ただし、残念ながら杉樽仕込みでなく、プラスチック(FRP製)のため、プラスチック成分の心配はクリアされていません。
熟成2年10ヶ月。濃口で、刺身用などに向く、とろみのある濃口醤油です。
市販醤油の問題点
醤油の製造方法は、戦後大きく変化しました。伝統からかけ離れた、いわゆる新式醸造が主流になっています。
最近コマーシャルで宣伝している丸大豆醤油でも、まず原料の大豆、小麦に問題があります。大豆のポストハーベスト農薬や遺伝子組換え、小麦ではポストハーベスト農薬、そして塩は工業用にイオン交換法で精製された公社塩が高血圧の原因となります
実は、大手メーカーは丸大豆でなく、原料代が安く、速醸ができ、コスト低減のできる脱脂加工大豆を使っているのが一般的で、石油の劇薬、n-ヘキサンで抽出した大豆油の搾りカスを使用。
このような旨味の抜けた原料では、おいしい醤油が作られるはずがありません。大豆カス(脱脂加工大豆)に強酸液を加え分解させ、ソーダー灰で中和します。
しかも、脱脂加工大豆では長期発酵に耐えることができませんので、加温処理をする温醸で、わずか3ヶ月程度で醸造してしまうのです。したがって、活性酸素を除去できるような酵母が成長するために必要な1~1年半もの長期熟成ができていません。
また当然、旨味がないので、調味料の登場となるのです。
そこでグルタミン酸ソーダ(脳障害)、イノシン酸や蛋白加水分解物(人毛などを劇薬を使って加水分解するため、発ガン性が確認されている)が新式醸造と称して使われます。また、水飴(ポストハーベスト農薬、遺伝子組換えのとうもろこしの加水分解物)、砂糖、ブドウ糖、甘草エキス、コハク酸、乳酸も使われます。
また、速醸では色も浅いので、カラメルなどで着色(発ガン性の心配)を施すのです。また市販の淡口醤油は、日東醸造の白しょうゆやかめびしの淡口仕込み醤油ではなく、このような濃口醤油をだしや塩水で薄めて作るため、腐りやすく、合成アルコールや安息香酸ナトリウムのような毒性の強い防腐剤も使われるのです。
さらに醤油本来の粘りがないために、ピロリン酸ナトリウムなどの結着剤を加えた上に、安定剤としてポリアクリル酸ナトリウムなども使っています。
かくして、ミネラルウォーターよりも安い低品質の目玉商品の醤油がスーパーに並べられることになります。
しかし、安いというのは単に見かけ上にすぎず、このような塩水に黒く着色したものを料理に使っても色か塩味がつくくらいで、いわゆる醤油の香り、風味がなく、使用量も多くなるため、かえって割高になる醤油なのです。また、コスト低減のため、環境ホルモンの溶出してくるプラスチック容器入りにしており、わずか3ヶ月で溶出してくる成分で醤油に異臭が出てくるほどのものなのです。
(文責:西川栄郎)