井村さんの有機米と有機米酒 金沢農業(7)
2003年6月4週号
自己完結循環型有機農業を目指して
「金沢農業」ご紹介シリーズ最終回は、有機米と「金沢大地」の有機純米酒です。井村辰二郎さんは、自己完結循環型有機農業を目指して、大豆、麦類、雑穀などの他、米を栽培し、それらの輪作に心掛けています。また、羊や鶏を飼って、有畜農業にも心掛けています。さらに米を始め、各作物とも複数の品種を作付けし、その輪作にも取組んでいます。栽培しているお米の中で、酒造好適米の「五百万石」は、農産工房「金沢大地」として金沢の酒蔵の老舗「中村酒造」において、純米酒に加工しています。
金沢農業の有機米
品種
飯米用…コシヒカリ、ミルキークインなど
酒用……五百万石
栽培方法
肥料 大豆くず(自家製)、米ぬか(自家製)、鶏糞(自家製、タナカファームなど)
除草 主としてロータリー式除草機を使う物理的な方法で行っています。米ぬか除草も試みています。
病害虫対策 基本的には粗植にして、多収量にこだわらず、病害虫に強い稲を育てます。株間を通常の30cmより広く、北海道仕様の33cmにし、風通しをよくしています。米の品種、他の作物などの輪作にも心掛けています。
化学農薬、除草剤などは一切使用していません。
五百万石などの早生種の水田では、稲刈りが終わった後、2番穂が出てきたときに冬季の冠水をし、2番穂を好む野生の鴨を集めるという、石川県推奨の「水稲のおとり池」に取組んでいます。その第一の目的は、その時期の麦に対する鴨の深刻な食害を防ぐことですが、水田に鴨の糞を落としてもらう目的もあります。
金沢大地の有機純米酒「滉(あきら)」
原料 井村さんの有機米「五百万石(酒造好適米)」
製造 中村酒造に委託しています。
製造工程
①精米
②洗米
③米を浸漬
④蒸米
⑤蒸米を冷却 製麹 酒母
⑥もろみ仕込み 水を加え 初添・仲添・留添と、酒母を加えてゆく
⑦もろみ熟成
⑧圧搾
⑨加水、調整
⑩瓶詰
⑪殺菌
中村酒造さんのところでは、通常は機械と手造り半々くらいなのですが、井村さんの委託分については全て手造りで、丁寧に行っています。もろみ仕込み用容器は、残念ながらFRP樹脂加工をしている鉄製タンクです。次回の仕込みにはグラスウール製、もしくはステンレス容器でお願いしています。
仕込みなどに使っている水は、酒造りには最適の白山の伏流水(井戸水)です。
原種の濾過をしていませんので、活性灰(炭香の原因)や活性白土の使用はありません。仕上がりは純米吟醸酒です。醸造用アルコールや糖類など、添加は一切ありません。
文責:西川栄郎