無農薬生芋100%、昔ながらの木灰こんにゃく
2009年3月3週号
ほんもののこんにゃくは、これほど風味に優れています。
腸の健康にも役立ちます。
●オルター特別仕様のこんにゃく
堺市にある中尾食品の三代目・中尾康司社長は、無農薬の生芋100%で、凝固剤として昔ながらの木灰を使った、オルター特別仕様のこんにゃくを作っています。現代では全く珍しくなったこの伝統的なこんにゃくは、こんにゃくマンナンや水酸化カルシウムを使った臭みのある市販品とは違って、たいへん風味のあるおいしいこんにゃくです。
中尾食品の営業担当者が飛び込みでオルターを訪問されたのが、お付き合いの始まりでした。それまでの中尾食品の製品は、大量生産する一般市販タイプのこんにゃくが主流でした。そこでオルターとして国産の、できれば無農薬のこんにゃく芋を原料とすること、凝固剤として水酸化カルシウムなどの薬品を使わず昔ながらの木灰で固めたこんにゃくができないか、と提案させていただきました。
このオルターの提案を承諾していただき、中尾食品として何度も試作を繰り返し、無農薬生芋使用100%の木灰こんにゃくが完成しました。その後も無農薬の生芋の確保に苦労されたり、より高い技術で造るための改良を重ねてこられました。
●創意工夫を忘れない職人気質
中尾康司社長は「木灰こんにゃくがこんなに素晴らしいとは思わなかった。自然のもので自然のものを固めるという単純なことで、薬品で固めた場合にはどうしても避けられないこんにゃく臭のない、これほど風味に優れたこんにゃくが作れるとは」と素直に驚かれています。生芋100%でおいしいこんにゃくを安定して作るために、自社で生芋から粘り成分のこんにゃくマンナンを取り出す(たいへん手間のかかる方法)中尾食品独特の方法も開発なさいました。
また、オルターに指摘されたプラスチックやアルミなど有害な材質の機械や容器を工場から排除するために、機械屋でもある中尾さんご自身の手造りで、ステンレス製の機械や容器を製作してきました。若い頃、機械化したこんにゃく作りをしている大手のこんにゃくメーカーで働いた経験が役立っています。いい製品を作るのにはいい道具が必要なのです。モノ作りの基本は、道具作りだと考えておられます。
いつも現場に入り開発に取り組んでおられるので、トラブルやクレームが発生したときの対応、解決能力、スピーディーさも素晴らしいものがあります。
●日本の伝統食、こんにゃくをもっと食卓に
中尾さんは、「オルターの提案を受けてこんにゃく造りをして本当によかった、またオルターのいろんなイベントなどで会員の声を直接聞けてたいへん励みになった」と喜んでいらっしゃいます。「食べてくれる人たちの顔が見える製品作り、信頼、信用の大切さがよく分かる。真面目にコツコツと仕事をしていくことが大切だ」と語っておられます。
食の欧風化にともなって、食材としてのこんにゃくの使用量が減ってきているようですが、こんにゃくの食物繊維は昔から腸の掃除に良いといわれており、健康管理の要である腸の健康にたいへん良いものです。伝統的日本料理の強い味方であるこんにゃくを食材として大いに見直して、利用してはいかがでしょうか。
原料
●こんにゃく芋
有機栽培(★★)赤城自然栽培組合(竹内敏昭組合長、組合員24名)有機認定JONA。原料の事情により、有機認証のない無農薬のものを使う場合があります。
●木灰
(株)小井土蒟蒻。原料はナラ、クヌギ、ミズナラ、ケヤキ、クワ、その他広葉樹
●ホタテ貝殻焼成カルシウム
木灰こんにゃくの凝固を安定させるため、少量のホタテ貝殻焼成カルシウムを補っています。
製造工程
工場は有機JAS認定工場です。工程で使用する水は、水道水をステンレスのタンクに貯蔵し、活性水にして使っています。これもおいしいこんにゃく作りのポイントです。また活性水のおかげで、工場はくさい臭いがありません。製造工程に使う容器、機械はステンレスで作られており、中尾さんが工夫したり、手作りしたものです。
★板こんにゃく・突こんにゃく・サイコロこんにゃく
①こんにゃく芋を芋洗い機で洗浄。土、根、小石などを除去する。
②こんにゃく芋をミキサーで粗く切る。
③特殊なミキサーで、さらに細かくすりおろす。
④これにメッシュ上で水をかけ、でんぷんを除き、粘り成分のこんにゃくマンナンを取る。
⑤②で作った生いもこんにゃくの細かくすったものと、④で作った粘り成分をミキシング容器に入れ、粘度を調整する。これで引きのよい粘りのあるものができる。この工程はたいへん手間がかかっていますが、中尾食品独自の生芋100%こんにゃく作りのポイントです。
⑥ホッパーに入れ、こんにゃくの仕上がりがプリンプリンになるよう、2~3時間熟成する。
⑦捻り機に入れ、木灰と少量のホタテ貝殻カルシウムを調合する。
⑧型に入れ、ボイル槽につけ、トロ火(75℃くらい)で12時間煮る。
⑨冷やしてから大きめに切り、3~4時間熟成させ、さらに1丁の大きさに切る。突こんにゃく・サイコロこんにゃくは突いて成形する。
⑩袋詰めする。
★糸こんにゃく
①~⑥板こんの製造方法①~⑥までと同じ。
⑦中尾食品が自家製作したオリジナルステンレス製糸こん専用練り機で、①~⑥で造った生芋こんにゃく汁と木灰と、水に溶かしたホタテ貝殻焼成カルシウムとを調合する。
⑧糸こんプラントで、糸状に搾り出したこんにゃくの束を炊き上げる。この糸こんプラントは、中にお湯を張ったステンレス製の容器の中に、ステンレス製パイプの長さが75m巻いてある中尾食品オリジナル(特許)のものです。一定の温度で炊き上がります。一般のプラントでは保温が悪いため、タンクに蒸気を吹き込むスタイルになっていますが、その場合こんにゃくでんぷんとカルシウムが化学変化を起こして、藻状の結晶が発生して品質を低下させることに繋がっています。一般の糸こんプラントのようにホースが剥き出しのものは職人が火傷する心配がありますが、そういう危険がないよう、安全性にも配慮されています。
⑨包装
市販のこんにゃくの問題点
市販のこんにゃくで生芋を100%どころか、一部でも使っていることは皆無に近いでしょう。こんにゃく芋から作ったマンナン粉を溶かし、水酸化カルシウムで凝固させたものが一般的です。これをこんにゃくらしく見せるために海藻粉末が添加され、黒く着色されています。
水酸化カルシウムで作ったこんにゃくもどきは、どうしても石灰臭があり、これをこんにゃくらしいと勘違いしている人も多いはずです。マンナン粉や、薄く切って干したこんにゃくなどには、その乾燥中に亜硫酸ガスなどが触れています。そのために漂白され、白くなっています。それほど多くはないと思いますが、ひどい場合には粗悪な粉末寒天で増量しているものさえあります。
かくして、形や色は昔ながらのこんにゃくには似ていても、風味や安全性において昔のこんにゃくとは似ても似つかない、まずいこんにゃくもどきが出来上がり、たいへん安く売られています。
―文責 西川栄郎(オルター代表)―