玄米や雑穀でパン、ケーキが簡単に作れます

2009年6月2週号

 

画期的な料理レシピ。
アレルギーの人の料理に、ダイエットの強い味方に。

●家庭で簡単に米パンが作れる画期的なレシピ

 玄米や雑穀と天然酵母や重曹だけでパンやケーキが作れる画期的なレシピ本のご紹介です。オルターの副代表でもあるCC'Cooking主宰・料理研究家の山本朝子先生が、たいへん重要な調理方法を発見されました。すでに特許も申請しています。
 このレシピは2009年3月8日に出版した下記の本「ミキサーでつくる発芽モード玄米・雑穀レシピ」で紹介されています。小麦粉、砂糖、たまご、乳製品を使わなくても、100%玄米や雑穀で各種のパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、クッキー、カステラ、パスタ、もち、まんじゅう、カスタードクリーム、ムース、プリン、ドレッシング、餃子の皮、豚まんの皮など、これまで小麦粉製品であったさまざまなものが作れます。ポストハーベスト農薬の心配のない安全な玄米や雑穀など国産食材だけで作れますので、アレルギーや化学物質過敏症の人に朗報です。見た目にリッチでおいしい洋菓子で、しかもカロリーが通常の1/2以下。ダイエットなどを気にする人にも朗報です。

●これまでの米パンとの違い

 米でパンを焼く研究はこれまでにも大勢の人が試みてきました。政府も莫大な予算をそれらの研究に費やしてきましたが、米100%でパンを焼くことは今まで誰も成し遂げてはいません。マスコミなどで時折話題になっている米パンは、小麦粉もしくは小麦粉グルテン、またはタピオカなど他の澱粉、ひどい場合には増粘多糖類などを使ったものです。このようにポストハーベスト農薬の心配な輸入小麦や食品添加物を使ったのでは、食べものとしては適切なものだとはいえません。
 これに対し、今回ご紹介する山本朝子先生の発見は、安全な食材だけで簡単に、しかも低コストで米パン、米ケーキが作れるたいへん優れたレシピです。

●玄米、雑穀などの種子ものを食べるとき には、発芽抑制因子に注意を

 玄米やひえ、あわ、きび、大豆などの雑穀をはじめ、あらゆる植物の種子には、土の上に落ちても腐ることなく、やがて季節がきて適切な時期になると芽を出すというメカニズムが働いています。そのための発芽を調節している植物ホルモン様物質として、発芽抑制因子が存在していると考えられています。中でも玄米に含まれている発芽抑制因子アブシジン酸はよく研究されているものです。
 2007年1月、オルター主催の講演会に講師としてお招きした西原克成医博(元東京大学医学部口腔外科教室講師)によれば、玄米に含まれている発芽抑制因子アブシジン酸abscisic acidはミトコンドリア毒なので、玄米食には注意が必要であると警告されています。ミトコンドリアは細胞の中にあって体温を生み出すエネルギー工場として重要な器官です。これが障害を受けることは冷え体質の原因となります。
 有機農業の田んぼにおいて、除草剤の米ぬかを撒く米ぬか除草法というのが行われていますが、単なる日光被膜材としての作用ではなく、米ぬかに含まれるアブシジン酸による草の芽に対する何らかの発芽抑制効果を利用している可能性があります。除草剤として使えるほど強力な発芽抑制因子なら、そのまま食べてしまう玄米の食べ方には注意が必要になります。
 そういえば、厳格な玄米菜食を行っている人の多くは顔につやがなく、皮膚は黒ずんで覇気がありません。エネルギー代謝器官のミトコンドリアを痛めつけられていたら当然のことなのかもしれません。ミトコンドリアの活動が下がって低体温になれば、癌細胞が好むところとなります。玄米を食べていたのに癌になったという声をよく聞くのは、そういうことも一因ではないかと思います。
 いっぽう、代替医療の方法のひとつとして、玄米食で癌を克服できたという話もあります。それはポストハーベスト農薬や動物医薬品汚染のある肉食、小麦粉食、油食など問題だらけの欧風食に比べれば、玄米を食べるほうがはるかにましで、相対的に病気と闘えているだけではないかと思います。玄米を食べるなら、念のため発芽抑制因子を不活化してから食べるほうがより健康的なはずです。
 玄米にはキレート結合でミネラルを捕捉する性質がある「フィチン酸」もあり、玄米食で鉄やカルシウム不足を心配する話も以前からありました。

●発芽抑制因子を無害化する方法

 人類は、人体に悪影響を与える発芽抑制因子を含む玄米、雑穀などの種子を食べ物として選んで以来、長い時間をかけて無意識のうちに安全に調理する道を工夫してきています。玄米を精白して分づき米や白米としたのも、その知恵のひとつだったといえるでしょう。
 西原克成先生は、玄米のアブシジン酸を不活化する方法として、①炊飯する前に十分に浸水する方法と、②煎る方法の2つがあると指摘されています。玄米は十分に浸水されることによって発芽へのスイッチが入り、成分が変化していき、アブシジン酸やフィチン酸の毒性も消滅します。このとき、実際の発芽までもっていかなくとも前発芽状態、すなわち種子の中で成分が変化し人間が食べても安全な状態となる「発芽モード」にして食べればよいのです。発芽までもっていくと、話題の栄養成分ギャバGABA(ガンマアミノ酪酸)が増えてきますが、玄米の食味はむしろ低下しますので、おいしい料理としてはおすすめしません。
 かつて日本人は玄米を食べるとき、前日から十分に水に浸けてから炊飯していました。圧力鍋のなかった時代、そうでなければ硬いままの玄米では鍋や釜では調理が難しかったのかもしれませんが、昔の人はじつはそれがおいしい食べ方であることを知っていたはずです。浸水された玄米にはグルコースやアミノ酸などが増えてくることが知られています。玄米は十分な浸水によって柔らかくなるだけでなく、前発芽状態に成分が変化し、発芽抑制因子という毒成分が消えることも、おいしいと感じる理由かもしれません。
 それに対して、玄米を事前に十分な浸水もせずに圧力鍋でさっさと炊いてしまうという方法では、発芽抑制因子が残ったままで不活化されていませんので、不適切な調理方法と言わざるを得ません。
 煎るという方法でもアブシジン酸は不活化できます。一時流行した「米ぬか健康法」は米ぬかを煎って食べていました。シガリオのブラックジンガーやリブレフラワー(カタログ2003年3月3週号参照)も煎っていますので適切な処理をしていることになります。ただし玄米をただ粉にしただけの玄米粉ではミトコンドリア毒の危険性は消えていません。
 雑穀の場合も同様な理由で、十分な浸水をしてから調理することが必要だと思います。そのままごはんに混ぜて炊くだけでは、単に腸の中を腸の表面を傷つけながら、消化もされずに通過するだけのもったいない食べ方になりかねません。

●発芽モード調理

 山本朝子先生はこのような玄米・雑穀の発芽抑制因子の存在をよく考慮して、おいしくて安全な玄米・雑穀の調理レシピ「発芽モード調理」を提唱されています。玄米が十分な浸水によって発芽モードになったら色まで白く変化し、旨味も増します。発芽抑制因子の毒性を消した「発芽モード」穀物を活かして、パンやケーキにまで玄米の新しい食べ方の世界を拡げられました。このことは玄米や雑穀でパンやケーキを作るという画期的な発見であるにとどまらず、世に安全な玄米の食べ方の世界を知らしめる大きな契機となるはずです。
 なお「発芽モード調理」の具体的工夫は出版本の中で詳述されていますので、それをご参照ください。

●間違いが発見のきっかけ

 山本朝子先生が米や雑穀100%でパンやケーキを作れることに気付いたきっかけは、ある料理教室での失敗だったそうです。
 その日、料理教室に「おかゆを炊くために用意しておいた、5倍の水に浸けてある玄米(生のもの)」と「すでに5倍の水でおかゆに炊いたもの(おかゆ)」を準備していました。「生の方」は炊飯器に入れて炊く予定で、「おかゆの方」はミキサーにかけて牛乳の代わりに使う玄米クリームにする予定でした。この両方を同じ種類の容器に入れていたため、誤って「生の方」をミキサーにかけてしまったのです。誤りに気付いたのはミキサーにかけてからでした。しかし「これを炊けば早く重湯に炊けるのでは」と気付いたのです。
 また、ミキサーの中で水を媒介にして「粉」ができていることにも気付きました。すなわち粉を水で練っているのと同じことなので、水分量の多少を工夫すれば、いろんな粉ものと同じ料理ができるはずだ、と気付かれたのでした。

この本だけで全てのコツが伝えられているわけではありません。詳しいコツを学びたい方は、ぜひグレインマイスター資格認定講座で学んでください。

―文責 西川栄郎(オルター代表)―

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