身体に優しい 深煎りコーヒー
2009年7月4週号
オーガニックの生豆を使って、酸化を防ぐためじっくり芯まで焙煎。生鮮品扱いでおいしく仕上げています。
●酸化を防ぐ深煎り
グリーンアイズの森口鍛さんは、輸入時の燻蒸のない有機認証のある生豆だけを使ってコーヒーを焙煎しています。味を大切にするため、良質なコーヒー豆の収穫できる1500~2000m級の高地のアラビカ種を数種、単品で焙煎してからブレンドします。アジア、アフリカの低地のロブスター種は、色はよく出ますが味が落ちるので使いません。コーヒー豆は農作物であり、年々作柄に変化がありますので、ブレンドにはその都度調整が必要です。
コーヒーの味は8割が焙煎で決まるといわれています。森口さんの焙煎の特徴は、低温でじっくり焼き上げる深煎りです。まず、低温で時間をかけて豆の芯まで水分を抜きます。ここで急ぐとムラ焼けして渋味、エグ味が出てしまうからです。豆の外側も内側も煎りムラなく、二度爆ぜさせて均一に焼き上げ、出来上がったら速やかに放冷します。
こうして濃いけれど爽やかで軽い、後味がよくあっさりした、胃にも優しくおいしいと評判のコーヒーが出来上がります。深く焙煎することによってカフェインや強い成分も減り、酸化する成分を残していないので酸化しにくくなっており、身体にも優しいのです。
●安全は当たり前、おいしさが肝心
グリーンアイズの焙煎工場は、京都市深草の喫茶店「気楽堂」の一角にあります。「飲んでもらっておいしい事がまず肝心。安全であるのは当たり前」と森口さんは語ります。お客さんの反応を直接ききながら焙煎の腕を磨いてきたのです。
学生の頃、よく通ったジャズ喫茶でコーヒーの味に興味をもち、有名なコーヒー店巡りをした経験もお持ちです。コーヒー好きが嵩じてコーヒーの卸会社で15年働くうちに「普通のコーヒーはあまりにひどい」と感じた森口さんは、1992年よりオーガニックなどこだわりのコーヒー作りに取り組まれました。「味を大切にしているので作りだめはしない。盆1日、正月2日間以外、毎日コーヒーを焙煎しない日はない」という、根っからのコーヒー好きでいらっしゃいます。
数ある生産者の中でもいち早くRビン(リユースビン)に切替えられた姿勢はたいしたものだと思います。「JAS有機認証マークによりどころを求める消費者が増えているかもしれませんが、安全な食べものの活動の原点である作る人、運ぶ人、食べる人の本当の見える関係を大切にしていきたい」と熱く語っておられます。
グリーンアイズのコーヒー
●原料
すべての生豆はフェアトレードで輸入されています。ブラジル、ペルー、グァテマラは有機JASです。メキシコは海外の有機認証です。現状のJAS認証が、食の安全や生産者にとってあまりにも不必要で不適切なシステムになってしまっているので、近い将来、海外認証に戻す可能性があります。
①ブラジル(ジャカランタ農場)
チェルノブイリの子ども達の救助活動を行っておられるウィンドファーム(福岡)の中村隆市さんとの提携品。豆は天日乾燥しています。生っぽい豆です。軽やかな苦みが特徴です。
②ペルー(コクラ生産者農業協同組合)
ATJとの提携品。
③グアテマラ(サンタフェリサ農園)
第三世界ショップにグリーンアイズ用として輸入してもらっている豆。SHBという最高グレードの豆です。
④メキシコ(マスカフェ生産者農業協同組合)サーティメックス認定。
ATJとの提携品。
●品種
ブルボン種、アヌレーロ種、ティピカ種
ATJではフェアトレード・プレミアムを現地の有機農業技術普及や研究、女性の地位向上支援プロジェクト、コーヒー農家の子ども達の修学の機会を失わない為の学生寮運営などに役立てています。このような支援を通じて、持続性のあるコーヒー栽培環境を調えて、極めて上質なコーヒー豆が収穫できるようになっています。
●焙煎
酸化の心配がない生豆の状態で保管し、オルターへの納品の前日または前々日(配達の2~3日前)に、毎回焙煎しています。グリーンアイズさんのコーヒー豆は焙煎後2~3週間目がおいしいのです。焙煎後7週間くらいはおいしく飲む事ができます。
味を考えて、1回に最大10kgの豆を約20分かけて低温でじっくり深煎りします。焙煎はその日の温度、湿度などの天候や、豆の状態、焙煎機の温まり具合に左右されるので、その都度腕が要求されます。梅雨時にはおいしいコーヒーを焙煎するのは難しいとの事です。うまく焙煎するために、煙突を高くして空気の吸引力を強めているのもノウハウのひとつです。
もうひとつの大切な特徴は、ブレンドするコーヒー豆は、それぞれ別々に単品で、それぞれの最適な焙煎を施し、それぞれが冷えてから最後にブレンドすることです。手間と時間はかかりますが、それぞれの豆の持ち味を最大に引き出せます。
●粉やアイスリキッドコーヒーに加工
「豆」は種類別に焙煎し、冷めてからブレンドしたコーヒー豆をそのまま。
「粉」は焙煎しブレンドしたコーヒー豆を業務用コーヒーミルで少し粗い中挽きにします。どちらもチャック付の袋にエージレス(コーヒ専用の脱酸素剤)を入れて詰めます。
「アイスリキッドコーヒー」は、アイスコーヒー用に一番深く焙煎した豆を1L当たり60g使用。業務用コーヒーミルで中挽きにし、ネルドリップで抽出。セラミックに通し、口当たりの良いリキッドコーヒーに仕上げます。「無糖」はそのまま、「加糖」には北海道産てんさい糖を加え、Rビンに瓶詰めします。ちなみに市販のアイスコーヒーは1L当たりコーヒー豆35~40gで作られており、着色にチコリを1~2割使っています。
●コーヒーの入れ方
グリーンアイズのコーヒーは、誰が入れても納得、満足していただける味になるように焙煎してあります。お湯の温度を高くして入れて下さい。低い温度だと渋味が口に残ることになります。コーヒーメーカーをご使用の場合、一般の家電メーカーはやめて、カリタ、メリタ、ブラウン、フィリップスなどの製品がオススメです。
一般のコーヒーの問題点
生産段階では、圃場での農薬の大量使用がまず問題です。コーヒーは虫がつきやすいので、専用の散布車で殺虫剤をまくぐらいすさまじいものです。労働者は低賃金でそのような危険な畑で労働させられているのです。輸入時の検査で虫が見つかれば、ポストハーベスト農薬の使用が行われます。元大阪大学理学部の中南元先生の分析では、かつて28種類もの農薬が検出されています。
国内で販売されている銘柄はブルーマウンテンなどと謳っていますが、ほとんどがニセモノです。アジア、アフリカの低地で栽培されているロブスター種は色はよく出ますがおいしくなく、安いコーヒー用の増量剤として使われています。大手ではアイスコーヒーの着色用にチコリを1~2割混ぜていることもあります。
コーヒーは通常の焙煎方法だと非常に酸化しやすく、豆で1週間、粉に挽くと3日、入れると30分で酸敗して、身体にはむしろ有害なものになってしまいます。大手メーカーが浅煎りを行うのは、歩留まりがよくコストが下げられるからです。とくにアメリカンは一般では目方の減りは10%程度です。ちなみに、グリーンアイズでは深煎りのため目減りは15%、さらによく焙煎するアイスコーヒーでは20%です。浅煎りした豆は、すぐに酸敗するので、危険でまずいコーヒーになってしまうのはカタログ1999年5月第1週でご紹介した通りです。
大手メーカーでは大量生産が前提なので、グリーンアイズのように味を大切にできる焙煎機能はありません。ブレンドする豆の特徴などおかまいなしに生豆でブレンドし、一斉に焙煎するという荒っぽいやり方をします。
インスタントコーヒーなどでは、色だけよく出る種類の豆を用いたり、着色用にチコリを混入したりするほか、結晶水となって水分を吸収する酢酸エステル系の薬品などの食品添加物や、着色料の使用の問題もあります。
―文責 西川栄郎(オルター代表)―