100%秋田県産 天然酵母ビール(生)「恵」誕生
2009年10月1週号
麦芽(モルト)、ホップ、酵母、水、すべて原料は国産。
フレッシュなホップの香りが漂います。
●最高の安全へのこだわりを実現
田沢湖ビールは2009年10月2日、麦芽(モルト)、ホップ、酵母、水とすべての原料の国産化に成功したビール「秋田まるごと自然仕込み あきた麦酒 恵」を発売開始します。フレッシュなホップの香りが漂う、天然酵母生ビールです。かつて田沢湖ビールの経営と営業を担当しておられた浮辺厚夫マネージャーがオルターに約束していた「地ビールの“地”にとことんこだわった国産原料のビール」が、ついに実現したのです。浮辺さんはすでに定年退職されましたが、その志を後輩のみなさんが形にしました。
麦芽(モルト)の原料の大麦は、秋田県立大学との提携で、大潟キャンパス内の農場で無農薬栽培されたものです。その大麦を自社内に新設された「モルト工場」でモルト化します。酵母は進藤昌博士が秋田県の桜の花(ソメイヨシノ)から採取した天然酵母。かつて秋田県麦酒醸造技術研究会がこの桜酵母を使い、ビールの発酵には難しいとされていた六条大麦でビールを作ることに成功しています。ホップは田沢湖ビール自社敷地内で無農薬栽培しています。水は日本一のブナの巨木を育んだ「奥羽山脈和賀山塊」の伏流水を使用。
このように「秋田まるごと自然仕込み あきた麦酒 恵」は、現在国内の地ビールの中でも最高の安全へのこだわりを実現しています。
●日常の中で飲まれる地ビールをめざして
田沢湖ビールは劇団「わらび座」が主宰する「たざわこ芸術村」の一角にあります。
民族伝統をベースにした現代的な舞台作品で全国公演をしている劇団「わらび座」は、秋田県田沢湖町に本拠を置いて、文化、自然、農、教育などをキーワードに、豊かな人間の営みのありようを追及して活動なさっています。かつて修学旅行でここでの体験をした学生が「心に汗をかくような感動を覚えた」と表現しています。その本拠は「たざわこ芸術村」と名づけられ、「わらび劇場」「湯泉ゆほぽ」「田沢湖ビール」工場があります。
現在田沢湖ビールを率いる小松勝久工場長は、かつてホテルマンをなさっており、そのときお客さんがビールを飲み始めるとなかなか料理に箸が進まないことから、何とか食事を妨げないビールはないものかと探しているうちにドイツの伝統的なビールに出会い、ついにはその魅力にとりつかれ、自費で留学してドイツビールの製法を学ばれた人です。折からの地ビールブームで地元で「わらび座」が地ビール作りを始めることを知って、駆けつけられたのでした。
オルターカタログ2002年7月2週号で「ひかりと風のビール」をご紹介した折、小松工場長は「ビールの味はまだまだだ」とおっしゃっていました(当時でもすでになかなかのおいしさでした)が、今回はさらに腕を上げられたと思います。小松工場長は「地ビールを何か特別なものとしてではなく、日常の中で飲まれるものになってほしい」と願っておられます。
●森と海を守る思いを込めた天然酵母ビール
現在オルターで取り扱っている「桜天然酵母ビール さくら」と「ぶなの森ビール」についてはドイツのモルトが中心。残念ながら、ヨーロッパ方面の農作物にはチェルノブイリの放射能汚染の心配があります。これらも3~5年かけて、今回ご紹介の自社製造国産麦芽(モルト)に切り替えていく予定です。
「ぶなの森ビール」は、酵母の研究で有名な秋田県の小玉発酵化学研究室を主宰する小玉健吉博士が世界自然遺産である白神山地の腐葉土から発見し、育てた天然酵母「秋田天然酵母796」で作ったビールです。通常のビール酵母ではなく天然酵母を使うのは、おいしいというだけではなく森を守ること、そして海を守る思いが込められています。
田沢湖ビールの「秋田まるごと自然仕込み あきた麦酒 恵」
ピルスナータイプの天然酵母生ビールです。「二条」は上面発酵のビールながら、桜天然酵母の特性により非常にドライな口当たり。黄金色で、ゴクゴク飲めるノド越しタイプのビールです。「六条」は六条大麦の成分にたんぱく質が多いため、二条大麦に比べてマイルドな口当たり。若干赤味がかった黄色で、麦芽のコクがより感じられるビールです。
■原料
●麦芽(モルト)・・・二条大麦(ニシノホシ)、六条大麦(シュンライ)
秋田県立大学大潟キャンパス内農場で無農薬栽培(担当・田代卓教授)。肥料にはバイオ有機、化学肥料(※1)を使用。自社モルト工場にてモルト化。1)収穫 2)選粒 3)浸麦(2日間) 4)発芽 5)乾燥(1日)(※2) 6)脱根。
※1と※2はオルターとしては問題ありと考えています。
●酵母・・・桜天然酵母
進藤昌博士が秋田県の桜の花(ソメイヨシノ)から採取した天然酵母。酵母の培養には麦汁のみを使用し、狂牛病のおそれのある動物肉汁ペプトン入りなどの人工培地は使っていません。
●ホップ・・・自社敷地内で無農薬栽培
●水・・・ブナの原生林に覆われている奥羽山脈和賀山塊の伏流水
■製造工程
①モルトを粉砕
②糖化
③濾過
④煮沸
⑤冷却
⑥主発酵(7日間)
⑦熟成(3週間~1ヶ月)
⑧ビン詰
発酵調節は冷水管による温度管理だけで、高速発酵法(熱発酵、撹拌発酵)、高速熟成法(熱貯蔵)、酵素添加、清澄剤やフィルターの使用などは行っていません。ビンへは生のままの充填で、加熱殺菌処理も行っていません。したがって酵母も生きています。またポリフェノール除去を行っていません。大手メーカーでは流通が長期間になるので、濁りの原因となるポリフェノールを除去しています。
■賞味期限
要冷蔵3ヶ月。収穫したての麦で仕込むフレッシュビールなので、早めにお召し上がり下さい。
市販のビールの問題点
本来ならビールは原料としてモルト(麦芽)を使用します。そのモルトがヨーロッパ産であるために、チェルノブイリの放射能汚染の心配があります。しかし、大手では一部の銘柄を除いてモルトを使うほど伝統的なまともなものではなく、ポストハーベスト農薬や遺伝子組換えの心配なコーンスターチなど安い原料を使っている、いわばニセのビールです。
また市販のビールの仕込み水には、使用量が多くなると累進的に利用料金が高くなる水道を使わず、下水を処理して作られる安い中水(工業用水)が使われています。その中水を高度処理し、さらにpH調整など人工的に硫酸カルシウムや塩化カルシウムなどの薬剤処理をした水を仕込み水として使っています。「自然水仕込み」を謳うCMの存在が、「自然水仕込み以外のビール」にどんな仕込み水が使われているかを物語っています。製造工程においては高速発酵法(熱発酵、撹拌発酵)、高速熟成法(熱貯蔵)、酵素添加などで発酵を調整しています。また、缶ビールのアルミ缶には環境負荷も問題となります。
価格については、一般的に地ビールが高くついています。これは大手メーカーよりモルトの購入原価に厳しい関税が課せられ、1kgあたり23円高くついているからやむをえないのです。大手メーカーはアリバイ的にごく一部の原料を国産で作らせ、その国内農家育成を口実にモルトの輸入関税を免れ、ゼロにしてもらっているのです。ここにも政官業の癒着の構図が見え隠れしています。
―文責 西川栄郎(オルター代表)―