大切に育てられる競走馬のためのスイートコーンを缶詰に

2009年12月1週号

 

たいへん貴重な低農薬(◇)のスイートコーン缶。
便利に使えます。


■競走馬用の安全なトウモロコシのおこぼれ
 北海道勇払郡早来町にある吉田牧場は、競馬ファンならよく知っている名馬テンポイントを育てた、競走馬サラブレッド専用のたいへん有名な牧場です。その吉田牧場の吉田敬貴さんは土壌改良のため、肥料としてトウモロコシの茎や葉などの有機残渣がほしくて、スイートコーン(ハニーバンタム)を栽培しています。
 ハニーバンタムの栽培は10年目で、ハニーバンタムを栽培する畑はその前後に牧草の採草地などとして利用しています。牧草には農薬をかけていませんので、農薬の使用はハニーバンタムに除草剤1回使用だけです。しかし、土地の利用は牧草・小麦・ビートなどおよそ4年、ハニーバンタム1年という割合です。小麦、ビートには控えていますが少量の農薬の使用があります。そもそも競走馬自体たいへんデリケートな存在なので、農薬の使用は要注意なのです。
 吉田牧場がほしいのは実ではなく茎や葉ですので、実のコーンは日本食品製造(合資)でスイートコーン缶に加工しています。サラブレッド牧場と提携して、無理なく安全なスイートコーン缶が実現しているのです。私たちは馬のおこぼれにあずかっているというわけです。
 この吉田牧場産スイートコーン缶は、そのほとんどをオルターで消費しています。大好評のため、今年は初めて年度中に品切れを起こしてしまいました。

■国産原料の安全なトウモロコシ缶は貴重です
 国内でのトウモロコシ栽培において、無農薬はたいへん珍しく貴重です。あっても到底、缶詰にするような量は入手できません。
 一般的に慣行栽培のトウモロコシは農薬使用量が他の農作物と比べて多いといえます。吉田牧場のような除草剤1回だけの栽培は、一般的な畑作農家にとってほとんど困難です。通常は収量や収入を気にして、やむを得ずもっと農薬を使います。一方、吉田牧場がほしいのはスイートコーンの実(粒)ではなく茎や葉のほうなので、収量や収入をあまり気にせず栽培できます。したがって国産低農薬のスイートコーン缶はたいへん貴重なものといえます。
 一般的なスイートコーン缶は、アメリカ産のトウモロコシが原料となっています。したがって遺伝子組み換えなどが問題となります。

■味付けは塩だけ
 日本食品製造(合資)は、この吉田牧場のスイートコーン(ハニーバンタム)を収穫後、味が落ちないよう素早くその日のうちに缶詰に加工しています。味付けは塩(赤穂の天塩)だけです。
 吉田牧場では、馬を放牧しない少し離れたところの畑では、牧草7年に対し畑作3年の割合で土地を輪作利用し、外食産業向けのスープ用のスイートコーン(品種:シュビリー)や慣行農法で小麦、小豆なども作っています。スイートコーン缶用のハニーバンタムは日本食品製造からの要請もあって、これらとは混合しないようにしています。
 日本食品製造(合資)では、玄米フレークのような穀物加工品と野菜の缶詰の製造が二本柱です。今後、生産者のわかった有機の野菜の缶詰作りに協力していただくことが可能です。日本食品製造(合資)とは、その玄米フレークを奈良よつ葉牛乳を飲む会が取り扱っていた関係で出会いました。

日本食品製造(合資)のスイートコーン缶
●原料
スイートコーン(オルター基準◇)
吉田牧場の吉田敬貴さんが低農薬(除草剤1回)で栽培。
およそ4年、牧草、小麦、ビート(小麦、ビートには控えていますが農薬の使用があります)を栽培したあとにスイートコーンを1年作っています。スイートコーンの品種はハニーバンタム。
堆肥と、残念ながら少量(20kg/反)の化学肥料を使っています。ただし、亜硝酸態窒素を検査していますが問題となったことはありません。

食塩
赤穂の天塩(カタログ2000年4月第4週参照)

●製造工程
①ハーベスターで原料(スイートコーン)を収穫
 収穫した日に鮮度が落ちないうちに加工処理します
②ハスカーで皮むき
③選別
④洗浄
⑤剥粒機で粒と芯を分離
⑥粒を水を使って浮遊選別し、茎、空の実を除去
⑦選別コンベアで変色粒除去
⑧食塩(赤穂の天塩)を使って調味
⑨巻締め
⑩殺菌、高温短時間
 熱水回転レトルト機
⑪冷却
⑫箱詰、保管、検査

市販のとうもろこし缶の問題点
 コーン缶は通常、新鮮なトウモロコシから加工します。北海道のメーカーは北海道産を使っています。この場合は、慣行農法による農薬汚染があります。
 大手メーカーの中にはアメリカでの冷凍加工品をリパックしているところもあります。アメリカのトウモロコシには農薬のほか、生物農薬であるBt農薬の遺伝子を組み込んで殺虫性を付与した遺伝子組み換えコーン(GMコーン)の心配があります。遺伝子組み換え作物については、アレルギー、内臓の障害、生態系への影響などが問題となっています。
 GMコーンのスターリンク作付けは、数年前、全米の0.2%程度だったのですが、花粉飛散によって20%以上のトウモロコシに汚染が広がり、流通、輸送での混入によって日本に届いたトウモロコシの60%以上にその混入が認められています。GM汚染トウモロコシは、単にコーン缶として利用されるだけでなく、家畜の飼料に使われ、畜産品全般を汚染します。また、コーンスターチ、コーンシロップ、異性化糖、水飴、オリゴ糖などに加工されてビール、清涼飲料水、お菓子を始め加工食品全般を汚染しています。遺伝子組み換え不使用と表記している商品についても、混入5%以下、1%以下という程度のものがあるので、残念ながら表示だけを信用するのは難しい現状です。
 一般のコーン缶はトウモロコシを砂糖、食塩、クエン酸などで味付けしています。それらの品質も問題になります。

―文責 西川栄郎(オルター代表)―

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