除草剤を使わない昆布
2009年12月2週号
柔らかく煮えるので加工用に向いています。
サラダ昆布がとくにおすすめ。
◆煮昆布に最適、価格も手頃
昆布は潮流の影響で味が変わり、浜ごとに値段も代わります。北海道では日高三石、羅臼、利尻島が高級だし昆布の産地として知られています。それらの昆布と比べれば釧路市周辺で採れる昆布は、従来から比較的安い価格で取り引きされています。
釧路東部で採れる昆布は「なが昆布」といって、細長い昆布で長さが6~15mと長く、柔らかく煮ることができる特徴があり、佃煮、おでんや昆布巻きなど煮物用、加工用に適しています。ほのかな甘みがあるのでだし昆布としても使われます。根に近い部分は昆布水用としても利用できます。
また、なが昆布の成熟前の昆布を「棹前(さおまえ)昆布」といい、1年のうちわずか半月しか採取できない貴重な昆布です。肉薄で柔らかく、煮昆布としてよく使われています。早く煮えるので「早煮昆布」の名称で呼ばれます。
◆除草剤を使うのをやめました
釧路市東部漁協取り扱いのなが昆布は、養殖ものでなく天然昆布で、すべて天日干しで作られています。
昆布を浜などに干す場合、干場に生えてくる草を抑えるために通常は除草剤をまいています。除草剤を使った場合、雨などで結局は海に流れ込むことになり、前浜を汚染します。オルターではかねてから昆布生産者に対して、大きなゴロッタ石のような草が生えないところで干すか、竹さおに吊るして干すなどして除草剤を使用しないようお願いしてきました。
釧路市東部漁協では「除草剤を使うことは海を汚染する」として、2007年から昆布漁師のみなさんに、干場に対して海水を散布し、塩の力で草を抑えるよう指導しています。その高い環境意識に敬意を表します。
◆とくに「ボイルきざみ昆布」がおすすめ
昆布はカルシウムなどミネラルのバランスがよく、食物繊維がいっぱいでヘルシーです。老化防止、血圧下げ、便秘解消、肥満防止、お肌のツヤと潤いに効果があるフコイダンを含んでいます。
今回とくにおすすめしたいのは「ボイルきざみ昆布」です。3~6月に採った柔らかい早採り昆布をボイルして刻んだ、そのまま食べられるサラダ昆布です。たいへんおいしくヘルシーです。ぜひお試しください。
オルターへのご紹介は、しっでぃぐり~んネットワークの川原智道さんです。
釧路市東部漁協の昆布
●ボイルきざみ昆布(冷凍)
■原料
天然なが昆布。3月上旬から5月末に採取された柔らかいもの。
■製造工程
①海水による洗浄
②専用釜でボイル(95~98℃)。
時間は昆布の厚みにより30秒~2分30秒
③ボイルした昆布を水道水で冷却、洗浄
④根部、荒葉、枯葉を除去
⑤専用機械で幅2mmに刻む
⑥カットした昆布を冷水(5℃)で約30秒洗浄
⑦専用ラックで10分間水切り
⑧金属探知で異物検査
⑨袋詰
⑩冷凍
■食べ方
水を入れたボウルに刻み昆布の袋をそのまま入れるとすぐに解凍します。水で洗ってはいけません。おいしくなくなりますので要注意です。食べたいときにすぐ食べられるので手軽です。冷凍のときは黒っぽい色をしていますが、解凍するときれいな緑色になり、シャキシャキした食感と優しい磯の香りが楽しめます。そのまま醤油、酢醤油、ぽん酢などをかけて食べたり、サラダに入れたり、せん切りやすった長芋と和え物、まぐろとわさび醤油にしてもおいしいです。納豆、炒め物、煮込み料理、野菜の浅漬けなどとの相性もよいです。
サイズは食べきりサイズの80g入りです。残ったものを再冷蔵しても2日ほどで雑菌が繁殖してしまう場合がありますのでご注意ください。
●棹前きざみ昆布
■原料
棹前昆布(春一番の成熟前の肉薄で柔らかいなが昆布)
■製造工程
①天日干しした昆布の異物を目視確認
②原藻昆布に水を散布し湿らせる
③昆布細切機で幅0.7mmに切断
④金属探知
⑤袋詰
■食べ方
ごはんのふりかけ、お茶漬、松前漬などに。
●早煮昆布
■原料
棹前昆布
■製造工程
①天日干しした原藻昆布の異物を目視確認
②25cmに切断
③袋詰
④金属探知
■食べ方
戻し10分、煮るのは30分で充分です。早く煮えてもとろけることがありませんので、おでんなど長時間煮る料理に向いています。昆布巻、結び昆布、おでんなどに。
●根昆布
■原料
なが昆布。10m以上に成長するなが昆布のみの根の部分だけをカットしています。
■製造工程
①原藻昆布の異物を目視確認
②18cmに切断
③袋詰
④金属探知
■食べ方
昆布水(適当な量の根昆布をコップにとり、一晩浄水に浸しておく)やだし昆布として。
市販の昆布の問題点
スーパーなどで売られている安い昆布は産地偽装されている可能性があります。中国産(品種はなが昆布)は本当にまずく、食べるとすぐ分かるそうです。そんなまずい味の出ない昆布をたくさん使ってだしをとると、かえって高くつくことになります。このような中国産が釧路産の昆布のイメージを傷つけてきました。
砂利の上で昆布を天日干しする場合、雑草対策として除草剤がまかれています。前浜の環境汚染になります。
包装する際、化学調味料入りのスプレーをしてアイロンで伸すということもあります。グルタミン酸ソーダの大量摂取は脳障害を引き起こし、中華料理症候群の原因となります。
―文責 西川栄郎(オルター代表)―