懐かしいおばあちゃんの味 手造り漬物

2008年3月1週号

 

原料の野菜、調味料にこだわり、手を抜かない本物の漬物。
市販ではもう味わえない、日本人のふるさとの味。


●とことんこだわりの原料と作り方


道長さんは、無農薬もしくは低農薬の野菜を原料に漬物作りをしています。発酵食品である漬物作りには、自然のままの微生物が生きている野菜が望ましいからです。野菜は地元・愛知県豊川市(旧音羽町)のものをできるだけ使っていきたいと考えられています。しかし現状では毎月30種にのぼる漬物を作るため、各地の有機農業の生産者と提携されています。
 おいしさの追求は当然、調味料にも及びます。漬物に合う納得できる塩を探すのに、良さそうな塩は全部試してみた、というくらいです。調味料に頼りすぎることなく、「塩本来の力だけで、シンプルでおいしい漬物」にとくにこだわっておられます。
 製造方法は、昨今の漬物加工メーカーのような食品添加物を乱用し、機械を使う工業的製法とは全く無縁です。漬物工場としては驚くほど素朴で、全てけっして手を抜かない手作業という徹底ぶりです。道長さんは家庭の漬物の味しか知らなかったので、それ以外の作り方をしようとは思わなかったのです。
 漬物は、人間にとって大切な腸内細菌を供給する発酵食品です。道長ではしっかり発酵させて漬物を作っています。また、酵母などの有用菌を殺すような殺菌を原則として行っていません。但し、古漬など一部(5~6品目)については、やむを得ず殺菌を行っているものもあります。

●おばあちゃんの味が忘れられず漬物屋に


石川豊久、貴架子ご夫妻が漬物本舗道長を創業したのは、25年前の1982年でした。サラリーマン時代もありましたが、子どもの頃から食べてきたおばあちゃんのぬか漬け、特にひね漬けのおいしかった味が忘れられず、とうとう、その好きな漬物作りを仕事にしてしまったのです。
 創業当時は引き売りのようなこともして苦労して販売を始められましたが、そのうち私たちの仲間の消費者団体と出会うなかで、出荷が安定しましたし、さらに無農薬の野菜や、より安心できる調味料を使うこともできるようになったのです。6年前からは長男の惠一さんも参加され、2006年11月には新工場が完成しました。
 伝統的日本食が忘れられている時代、薬品だらけの漬物ばかりの時代にあって、道長さんの漬物は日本人が忘れてはならない、心のふるさとそのものだと思えるのです。もとより、漬物くらいできるだけ家庭で手作りなさるようお薦めしています。
 道長さんの漬物は、オルターの材料を使えば家庭でも作れるような素朴なものです。しかし、この素朴な漬物がとても輝いて見えるのは時代のせいなのでしょうか。

漬物本舗 道長の漬物
野菜や発酵は生き物です。したがって工業製品のようにいつも一定の味にできるとは限りません。この味の変化も手作りの味としてお楽しみください。

主な野菜の生産者さん(敬称略)

■愛知県豊川市・鈴木慶市、筧富士雄、小野博史、市川靖男、高柳義敏、こだわり農場鈴木(音羽米研究会)…白菜、大根、人参、なす、胡瓜、赤しそ、赤かぶ、しその実、米ぬか

■愛知県新城市・松沢政満(福津農園)、小山柳次…隼人瓜、梅
豊田市・児山弥香(J2農場)…にんにく、菊芋ほか

■安城市・天野グループ…大根、ラッキョウ

■豊橋市・生竹園芸…アロエベラ

■田原市・前川漬物、小笠原弘(渥美どろんこ村)…たくあん漬、大根など

■知多郡武豊町・わっぱの会知多協働事業所…漬物、レモン、小麦粉

■長野県小諸市・長野有機生産者連合…高原野菜

■長野県山内町・佐藤武士(一風、あくと)…野沢菜

■長野県飯田市・松村隆平(矢矧農園)…りんご

■熊本県八代郡・水の子会…にんにく、生姜

■群馬県高崎市・中沢良一(中沢農園)…白菜

■茨城県結城市・栃の葉くらぶ…白菜

主な調味料

■塩…中国福建省の天日塩(福建省塩業輸出公司)、ソルトビー(国産天日塩/高知県黒潮町)

■砂糖…新光精糖(粗糖/鹿児島県種子島)、ホクレン(ビートグラニュー糖/北海道)

■醤油…日東醸造(白たまり/愛知県碧南市)、カクトウ醸造(本溜り/愛知県武豊町)

■みりん…角谷文治郎商店(碧南市)

■米酢…河原酢造(福井県大野市)

■こうじ…杉浦醸造所(愛知県岡崎市)

■唐辛子…正農会(韓国ソウル市)

市販の漬物の問題点
漬物の原料の野菜は、その多くが安い中国などから塩蔵の状態で輸入されたものです。もちろん農薬汚染の心配な野菜で、塩蔵時には合成保存料の使用の疑いがあります。この塩蔵野菜を塩抜きすれば、野菜の風味は全て抜けています。あとは合成調味料で味付けするしかありません。
 本来漬物は野菜の葉と葉の間に塩をふり、ぬか床などでじっくり発酵させるものですが、現代の漬物はそんな手間のかかる作り方はしていません。国内で3社ほどの漬物メーカーのつけエキスに、先の塩抜きした野菜を放り込めば出来上がりなのです。京漬物であろうとどこのメーカの漬物であろうと、画一的な味がするのはそのためです。
 たまに野菜から作るメーカーがあっても、野菜を塩で漬けるのではなく、最初から塩水に漬け、手間のかかるアク抜きもしない。野菜は歩留まりをよくするためにしんなりさせているだけ。つけエキスを使うのも同じです。
 つけエキスには、グルタミン酸ソーダ(脳障害)、蛋白加水分解物、酵母エキス、異性化糖、人工甘味料、合成保存料、酸化防止剤、酸味料、合成着色料や合成香料、みょうばん、キャリーオーバーのある醤油、みりん風調味料、酢など、ポストハーベスト農薬や食品添加物だらけの限りなく粗悪な原料が使われています。製品の見栄えをよくするために、泡を出さないための消泡剤(シリコンオイル系)が使われています。

以下のような食品添加物も使っています。

調味料…アミノ酸系調味料、グルタミン酸ソーダー(脳障害)、サッカリンナトリウム、ステビア(催奇形性)、甘草、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸(いずれも原料、精製工程が心配)

着色料・発色剤…黄色4号、赤色102、106、β‐カロチン、緑色3号ほか

糊料・増粘多糖類…キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム

防腐剤・酸化防止剤…ビタミンC、ソルビン酸

 市販の漬物の製造では、このように「発酵させずに味をつける」のが基本です。雑多な菌がかかわる発酵では管理するのが手間もかかり難しいからです。また、仮に発酵工程があっても、加熱処理や防腐剤を入れて有用菌も死滅させてしまい、発酵食品とはいえなくなっています。

―文責 西川栄郎(オルター代表)―

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