放射線照射にNO!と言える香辛料メーカー
2007年5月3週号
契約栽培にこだわた原料。
風味を損なう熱処理や化学薬品処理を行わない加工。
安全、安心の香辛料です。
●香辛料に忍び寄る、放射線照射
食べものに電離放射線(コバルト60の出すガンマ線など)をあてて発芽阻止、殺菌、殺虫、熟度調節を行うのが「放射線食品照射技術」です。日本では1972年に当時の厚生省がジャガイモの照射を認可し、1974年に北海道士幌町に照射施設が作られて、大手ポテトチップス製造メーカーが利用を続けています。その後今日までジャガイモ以外に照射を認可された食品はありませんが、照射食品の有害性は1978年の和光堂ベビーフード事件で世間に注目されました。現在も、輸入のまつたけ・えび製品・鶏製品などに照射が使用されているおそれがあります。
2006年10月、内閣府原子力委員会は、食品、特に94種類の香辛料(ハーブや玉葱、人参まで含む)への放射線照射を解禁するよう求める報告書を厚生労働省に送りました。これが認められれば、カレーをはじめスパイスを使うありとあらゆる加工食品に照射スパイスが広く使われ、さらに次々と認可される対象が広がるおそれがあります。オルターも参加している「照射食品反対連絡会」が、その阻止のために活動しています。
●メーカーとして「照射にNO!」
私たちのこの「照射食品NO!」の活動に、香辛料メーカーとしていち早く賛同を表明されたのが向井珍味堂です。
向井珍味堂では、貯蔵中の香辛料にメイガ類などの虫が発生するのを防ぐのに、有害な化学薬品や原料の風味・色合い・香りを低下させる高温処理を行わず、極低温域におけるヒートショック法(ECO Buster99・特許)で十分な対策をとっています。したがって危険な放射線照射を全く必要としません。
●"珍"しい旨い"味"のものを作る"会社"
大阪市平野区の向井珍味堂は、現在の中尾敏彦三代目社長の母方の祖父(向井浅吉初代社長)と父(中尾尭雄二代目社長)が1947年に唐辛子粉末ときな粉の製造業として創業した会社です。
社名の由来は顧客満足度を大切にするという意味で、「他にない"珍"しい旨い"味"のものを作る"会社"」。安全安心な食べものの基本を守りながら、2004年に完成した新鋭の工場で、ベストセラーよりロングセラーをモットーに製造に取り組んでいます。
原料は生産者との契約栽培を心がけ、可能な限り国産・無農薬にこだわっています。製品加工においては安全性を考慮し、上述のヒートショック法の他、メイガ類のフェロモントラップ、工場内の粉溜り(虫の発生場所)を作らない建物のR構造、窓の防除網の斜め設置などさまざまなアイデアを工夫しています。異物クレームを防ぐためには、原料段階からの品質管理や最新鋭の選別機と目視検査を徹底しています。
また、年中新物と同様の鮮度を保つために、原料を冷凍倉庫で冬眠させておき、受注生産で少量ロットずつ手造りするという、手間を惜しまない製造システムを行っています。加工後は色がとびやすいからです。包装容器も光が中身にあたらないよう香辛料業界では珍しい特殊アルミパックを導入しています。
オルターへのご紹介はムソー食品です。
向井珍味堂こだわり香辛料
この項ではオルター取扱品に限って記述しています。増量、着色、化学薬品による防虫・殺卵などしていません。無添加です。
●山椒
貴重な国産大粒ぶどう山椒。種を抜いて芳香を保つ粗挽き。
原料…ぶどう種山椒の果肉(種抜き)、山椒の葉。国産・無農薬。/集荷責任者…岡保さん/生産者…久保由男、上垣文子さんら約50名。奈良県・和歌山県の山間部、北向きで原生林から少し離れた伏流水のある地域でおいしい山椒が採れます。涼しい気温で庭先で無農薬で植えているもの。苗からだとトゲの多い在来種イヌサンショになるので、接ぎ木をしてトゲのない大粒のぶどう種(アサクラサンショを改良したもの)にしています。梅農家からの農薬の飛散にも注意して農家を選定しています。/製造方法…①実の採取②天日乾燥③入荷、冷凍保管④目視選別⑤実から種を除く⑥果肉と少量の葉を荒挽き粉砕⑦さらに細かく粉砕⑧異物除去⑨ふるい選別⑩磁石で金属異物除去⑪包装⑫金属探知/使い方…うなぎをはじめ焼魚、汁物、焼肉、佃煮、ドレッシング、マヨネーズ、魚料理の臭み取りに。
●一味
天日乾燥した本タカ唐辛子を弱火でじっくりと煎り上げた香ばしさが特徴。
原料…本タカ唐辛子。/生産者…岐阜県産。西松義尚さんら約450軒の農家。殆どが無農薬ですが、一部ネキリムシ防除として農薬(ダイアジノン)を使用する場合があります。/製造方法…①採取した唐辛子を天日乾燥②選別③入荷、冷凍保管④目視選別⑤粗挽き粉砕⑥さらに細かく粉砕⑦釜にて火入れ、「深煎り」と「浅煎り」を作る⑧ブレンド⑨ふるい⑩磁石で金属異物を除く⑪包装⑫金属探知※メイガ類の対策は、極低温域でのヒートショック法を採用。/使い方…鍋物、漬物、炒め物、中華料理など。
●軸付きタカノ爪
軸(果柄)の緑を残し、つやのある赤い実のきれいな唐辛子です。
原料・生産者…「一味」と同じ。/製造方法…①採取した唐辛子を天日乾燥②選別③一粒ずつ風力でみがき「軸付」のまま仕上げ/使い方…たけのこ、らっきょう、料理の彩りに。
●輪切り唐原料・生産者…「一味」と同じ。/製造方法…①少し加湿して手で輪切りに②種を除く③再度天日干し乾燥/使い方…キンピラゴボウ、おせち料理、漬物(千枚漬やらっきょうなど)の辛み、彩りに。
●粉わさび
原料…中国産無農薬西洋わさび(ホースラディッシュ)。/製造方法…①乾燥(機械)②選別③粉砕④メッシュで分級⑤ふるい⑥磁石で金属異物を除く⑦袋詰め⑧金属探知/使い方…刺身、ざるそば、山かけそばに。マヨネーズに混ぜても。※食べる直前に水で練り、約5分間容器のまま伏せてからお使いください。
●洋がらし
日本人向きの上質の辛子種を使用。
原料…カナダ産辛子種/製造方法…①風力選別で異物除去②ふるい③磁石で金属異物を除去④粗粉砕⑤圧搾で油除去⑥胴つき粉砕⑦ふるいで分級⑧撹拌⑨乾燥⑩ふるいで選別⑪袋詰め⑫金属探知/使い方…おでん、納豆、しゅうまい、フライなど和洋中全般。※必ずぬるま湯で、深めの器でよく練り約10~30分伏せておいてからお使いください。
●白こしょう
完熟したあとで実から皮をとり、微粉末にしたもの、独特のマイルドな香りが特徴。
原料…マレーシア産白こしょう/製造工程…①選別②少量ずつ粉砕③ふるい④磁石で金属異物除去⑤袋詰め⑥金属探知/使い方…肉や卵、魚貝類などの料理の仕上げに。サラダにも。
●黒こしょう粗挽き
完熟直前の実を皮つきのまま乾燥したもの。すかっと強い香りが特徴。
原料…マレーシア産黒こしょう/製造工程…白こしょうと同様。ただし?のふるいは2段階、微粉末は除く。粗挽き、少量手でふるい。/使い方…粗挽きなので肉料理、各種西洋料理の下ごしらえやサラダドレッシングに。
市販の香辛料の問題点
香辛料は比較的農薬使用が少なくてすむ農作物です。しかし輸入時に虫が発見された場合は、ポストハーベスト農薬燻蒸が行われます。
山椒…中国から輸入されるものは泥臭く粗悪品があります。国産でも標高の低い地域ではハダニなど虫が発生しやすく、農協は農薬使用を奨励しています。とくに山椒専業農家のものは問題です。安く見せかけるために果肉から種をとらずに混入しているものがほとんど。
唐辛子…中国などからの輸入物がほとんど。農薬の使用もあります。高温蒸気を使用しているので風味落ち、色落ちがあります。防虫に化学薬品が使われます。
粉わさび…クロレラ、マスタードなどわさび以外で増量しているものがあります。合成着色料の使用が一般的。
洋がらし…ターメリックなど辛子以外で増量しているものあり。合成着色料の使用が一般的。
白こしょう…グレードにより上下の価格差は8倍あります。例えばインド産は安いが保管状態が悪いのか異臭のあるものがあります。でんぷん増量が一般的。
黒こしょう…そば粉で増量しているものがあり、アレルギーも心配です。
―文責 西川栄郎(オルター代表)―