人にやさしい防虫せんこう「菊花せんこう」
2006年7月2週号
農薬使用反対思想を基に生まれた、蚊を殺すのではなく、除ける線香です。
くゆらせると、和やかな芳香が楽しめます。
●「家庭内殺虫剤に問題あり」と開発
戦前の蚊取線香には、キク科の多年草ジョチュウギク(除虫菊)が原料に使われていました。ジョチュウギク成分、天然ピレトリンは昆虫に対し、即効的な殺虫効果がありながら、人間など温血動物の体内では速やかに解毒されます。さらに昆虫には抗体を作らせない特徴を持つ植物成分です。
除虫菊の原産地はバルカン半島などです。明治から戦前までは日本でも瀬戸内海の島などでたくさん栽培されていましたが、今では、こういう栽培風景はなくなってしまいました。現在の蚊取線香には、人にやさしい除虫菊に代わって、神経毒性のあるピレスロイド系の農薬が使われています。
農業用農薬の危険性は1970年代から消費者運動の中で注目されてきましたが、家庭内農薬に対する問題提起は出遅れていました。この状況に異を唱えたのが、(株)りんねしゃ代表の飯尾純市さんです。
飯尾さんは、愛知県津島市で共同購入運動に取り組んでいた当時、農業での農薬散布に反対して農家に安全な農産物栽培を働きかけて以来、家庭内殺虫剤にも反対してきた方で、私たちオルターの昔からの仲間でもあります。自らも化学物質過敏症に悩んできた飯尾さんは、試行錯誤の末1998年、不安な農薬類を添加していない植物原料だけの防虫線香「菊花せんこう」を開発されました。
●主原料栽培へのこだわり
影山さんは国産菜種の産地である東北地方によく行かれ、宿で「菊花せんこう」の主原料は中国原産植物で除虫草と呼ばれ、現地では昔から蚊遣(かや)りとして使われていたものです。除虫草は忌避効果があると同時に芳香性 にも優れた植物です。また、除虫菊の粉末はさらに忌避力があり、2種類の植物が相乗効果を発揮します。
植物原料の栽培は、他人任せにせず経営者である飯尾さん自身が見守っています。中国山東省にあるりんねしゃ所有の除虫菊畑は、環境汚染と人体への影響 を考えて無農薬栽培です。中国残留孤児、満蒙開拓農家、第二次世界大戦など、日本人と中国人の過去に知り合った関係者と話し合って生まれた栽培です。国 の農業政策に翻弄されてきた中国農民ですが、除虫菊栽培をきっかけに、環境に配慮した農業へ転換したいと願っています。
さらにりんねしゃは1998年、過去世界一の栽培を誇った北海道で、除虫菊の栽培を復活させました。有機農産物提携先農地を借用し、北海道最後の品種を栽培しています。「歴史から学び、搾取と被搾取の悲劇を繰り返さない、これが菊花せんこうの思想です」と飯尾さんは語っておられます。
●商品ではなく主義として、人生をかける
「菊花せんこう」は殺虫力は弱いのですが、忌避効果があり、人にもやさしいせんこうです。医薬部外品の蚊取線香ではなく、防虫線香として販売している理由は、国の定める殺虫成分基準量に疑問があり、より人体にやさしく、環境にも配慮する自主基準を目指しているからです。飯尾さんは、「医薬部外品の殺虫成分は強すぎるのではないか」と判断しておられます。
合成殺虫剤を使用しないで、天然植物原料だけですが、忌避効果については公的機関で吸血阻止実験を行い、使用上の効力があることを証明されています。
「安全の基準には責任者の所在と、原料確保から製造販売・消費まで一貫して把握できる体制が必要です」と飯尾さん。販売だけではなく、主原料栽培から管理体制を持ち、全ての段階に責任を持てる流通経路があり、安心と安全を優先する方針を心掛けられています。
飯尾さんは「農業における農薬だけでなく、家庭内で散布されている蚊取線香、ハエ取り、ゴキブリ取りなどの有害性にも目を向けてほしい」と訴えておられます。
飯尾さんがこのように蚊取線香の情報を公開していることに対し、業界は快く思っておらず、役人を使ってりんねしゃや関係製造元へわけのわからない様々な嫌がらせが続いています。このような業界、行政からの不当な圧力に対し、消費者パワーでこの「菊花せんこう」を守っていきましょう。
(株)りんねしゃの菊花せんこう
●原料と特徴
除虫草(中国産)※…忌避効果、芳香効果
除虫菊粉末・除虫菊茎粉(中国産)※…忌避効果
木粉(標準タイプは国産、他の2タイプは中国産)…燃焼剤
でんぷん(標準タイプは国産、他の2タイプは中国産)…結着剤
蜂蜜(中国産。角型ミニサイズと長時間用のみに使用)※…芳香、結着効果
タブ粉(クスノ木科の常緑高木。標準タイプは国産、他の2タイプは中国産)…結着効果
※の原料は(株)りんねしゃの中国にある所有農園・工場にて栽培、粉末加工、輸出入、保管流通を行っています。栽培には除草剤、殺虫剤、殺菌剤、化学肥 料な どを一切使用していません。
●製造工程
原料検査 → 秤量 → 混合 → 練合 → 押出 → 打抜 → 乾燥 → 包装
りんねしゃが原料を持ち込み、昔から除虫菊で蚊取線香を作ってきた工場で製造しています。防カビ剤デヒドロ酢酸、ソルビン酸などは使用していません。合成結着剤、燃焼剤、染料マラカイトグリーンなど合成添加物も使用していません。従来防腐剤として微量使用していたソルビン酸も、2006年度より排除することができました。
製品の色は、合成着色剤や染色剤などを使用していないので、緑色ではなく植物粉末の原料色のままです。植物の収獲時期や乾燥・粉末状態により、出来上がりの色は多少異なる場合があります。
パック:ポリプロピレン、 箱:100%古紙再生未晒紙
ー文責 西川栄郎ー