今も残る本物の味 沖縄の島々からの純黒糖 真南風(3)

2005年4月1週号

 

今も残る本物の味  沖縄の島々からの純黒糖

前号に引き続いて、真南風のご紹介第3弾です
黒糖はその産地によって特有の味や風味に違いがありますさて、今回紹介の新物の味と風味やいかに…

 沖縄の島々において「沖縄県黒糖工業会」で純黒糖の認定を受けている黒砂糖は、現在のところ伊平屋、粟国、小浜、西表、波照間、与那国、多良間の7つの島だけで作られています。真南風からはこのうち、粟国(アグニ)、小浜(コハマ)、西表(イリオモテ)の純黒糖が届けられます。
 沖縄の黒砂糖は、その製造法が沖縄に伝わった江戸初期以来360年の古い歴史があります。NHKの朝の連続ドラマ「ちゅらさん」から沖縄ブームになり、最近では毎年純黒糖が早々と売り切れ、たいへん貴重品になっています。
純黒糖はもともと生産量が少ない上に、昨年は15個もの台風が沖縄に接近したため、砂糖きびの収穫が影響を受け、たいへん品薄になっています。もともと沖縄の砂糖産業は、輸入される砂糖製品にかけられた関税や調整金によって保護されているという、たいへん皮肉な形になっています。また、国産のサトウキビにおいて、粟国島の一部のように高齢化のため農薬を使用していない地域もありますが、一般的には農薬が使用されています。中には農薬を空中散布しているところもあります。
また黒砂糖にも輸入粗糖や白砂糖の混入、カラメル着色などの問題もあります。国産の純黒糖はぜひとも守り続けていきたいもののひとつだと思います。
 黒糖はその産地によって特有の味や風味に違いがあります。今回は今期の新物をお届けいたしますので、その味や風味を楽しんで下さい。

黒糖粟国
 粟国島は沖縄本島から約80kmにあります。映画「ナビィの恋」のロケ地でもある美しい島です。黒糖粟国は、JAおきなわ粟国営業所製糖工場で作られています。
 粟国の製糖工場では、沖縄では唯一残っている直火釜の製造工程で作られているため、黒糖の良さが残っており、おいしさには自信があります。製糖時のアクが十分にメッシュで取り切れない工程である結果、カルシウムなどミネラルの含有量も高いのです。賞味期間は2年としています。

◇製造方法
①サトウキビ手刈、工場へ搬入
②サトウキビを裁断して、圧搾機で搾汁。
 この時、一般では砂糖分を可能な限り搾り出すため、バカス(搾りカス)に後から水を かけ、合計で3~4回、圧搾搾りするところ、粟国では水かけを行わず、2回搾っているだけです。歩溜りは悪くなりますが、それだけおいしい黒糖になっています。
③搾り汁に石灰乳(炭酸カルシウム)を入れる。
 蒸汁タンク→振動フルイ機→沈澱タンク→振動フルイ機→蒸汁タンク→一番鍋で石灰 乳混合
 石灰はpH調査、不純物沈澱のために入れています。
④1番~仕上げ(5番)までの直火鍋で加熱し、1段ずつ汁汲み取り用柄杓を使って移し変 えながら、じっくりと煮詰めて濃縮していきます。一般には直火ではなく、ボイラー を使っています。最初火をつけるときに、サトウキビの搾りカス、バカスを使っています。その後はC重油を使っています。この直火鍋での製造においては、風と気候の影響が大きく出ます。南風はいい砂糖になりにくいのですが、カラッとした冬場の北風のときにいい製品が出来ます。
⑤冷却した後、かちわりにします。

島の時間 かちわり黒糖
 NHKドラマ「ちゅらさん」で有名になった小浜島の小浜糖業工場で作っています。小浜島は八重山諸島のほぼ中央にあります。
 「初日で手の皮をむき、3日で肩の皮をむき、1週間で心の皮をむく」と、南島詩人と呼ばれる平田大一さんが島ルネッサンス運動の1つとして1995年から始めたきび刈を通じて、島の暮らしと未来をユンタクする(語り合う)塾として、小浜きび刈援農塾を始めました。島の芸能を生んだ、この“聖なる難儀”きび刈を共に味わってほしいと、全国に呼びかけたこの援農塾は、最盛期は1,000人を超える塾生でにぎわいました。
 平田大一さんが沖縄本島で活動の場を移されたりして、今ではその規模は縮小されたものの、冬の恒例行事として定着し、ふるさと農場倶楽部として続けられています。
 後継者不足、労働力不足で機械化が進む中、小浜島は全国の援農を受け、全て手刈です。ふるさと農場倶楽部の農場では、除草剤を使用せず、防除も最小限度に抑えられています。ただし、現在ではこの援農分だけでは毎回の製糖に足りず、他の小浜産も混合されています。

◇製造方法
①サトウキビ手刈、搬入
②サトウキビ裁断、圧搾機で搾汁
 圧搾機は4重圧搾機で、注加水が行われています。
③糖汁加熱機で108℃に加熱し、石灰乳(炭酸カルシウム)を混和します。
④連続沈殿槽(クラリファイヤー)
⑤連続濾過装置(オリバーフィルター)
⑥清浄汁タンク(前置効用缶)
⑦連続3基の効用缶で煮る。
⑧連続2基の濃縮缶で仕上げます。
⑨冷却・撹拌

西表黒糖
 西表島の西表糖業(株)で製造しています。イリオモテヤマネコやイリオモテカンムリワシも生息している、大部分が亜熱帯の原生林の、水に恵まれてきた、サトウキビ畑から収穫されます。東京の有名な虎屋の羊羹に、ここの黒糖が使われています。
 真南風への紹介は、後日ご紹介するパイナップルの生産者です。

◇製造方法
小浜糖業工場と同じ。

市販の黒糖の問題
●虫歯になる今の黒砂糖
 本来はカルシウムが豊富な黒砂糖を食べても、虫歯になることはなかったのです。しかし、今の黒砂糖は、虫歯になるのが珍しくありません。なぜなら外国から安く入る粗糖を精製した安い白砂糖で増量し、さらにカラメル着色して黒く見せているからです。
 この白砂糖増量以外にも、黒砂糖には色々と問題があります。
古くなった黒砂糖を新物にもどして炊く、炊き直しもあります。また、真っ黒になっている黒砂糖は、化学肥料を多投して作ったきび(糖度が低く、亜硫酸塩などのアクが多い)の汁は炊き上げるのに時間が長くかかるため、カラメル化して黒くなっているのです。
 良質の黒砂糖は真っ黒でなく「淡い黄緑色」か「淡い茶褐色」になるはずなのです。黒糖100%の純黒糖を選びましょう。

          -文責 西川栄郎-

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