健康ダイエットにもおすすめ葛きり&はるさめ
2005年9月2週号
国産原料100%の貴重な葛きりとはるさめです。ゆっくり消化され、満腹感があるため、ダイエットの強力な助っ人にもなります。
葛きりは、山野に自生する葛(ツル性マメ科植物クズ)の根に含まれる澱粉から作る、日本で昔から伝わってきた食べものです。はるさめの原形は、緑豆の澱粉から作る中国の緑豆はるさめといわれています。
葛きりやはるさめはゆっくり消化され、また満腹感があるので、ダイエットの強力な助っ人になります。ゆっくり消化されることから低血糖症の対策にも有効で、自然医学で葛が神経症状に効果があるとされている理由もここにあります。
鍋の添え物としてだけではなく、その機能に注目すれば、食卓の主たる食材としての利用の仕方があるのではないでしょうか。
葛きりやはるさめを製造しているメーカーは現在日本に10社程度で、その半分が奈良県にあります。山に自生する「吉野本葛」の名産地であった奈良県ならではの伝統でしょう。戦後、馬鈴薯(じゃがいも)澱粉や甘藷(さつまいも)澱粉を使ったはるさめを製品化したのも奈良県桜井市でのことで、それ以降年々増産されてきました。
葛城山のふもと・奈良県御所市の金正食品は、国産の原料を使い、漂白剤・増粘剤などを使用しない無添加の葛きり、はるさめを作っている貴重なメーカーです。原料にこだわるだけでなく、製造工程でも手を抜いていないため、当然大手メーカーの類似品とはひと味違い、大変おいしいものです。
金正食品は1948年に、初代・吉川政一さんが乾燥中華麺の会社として創業。現在は葛きりとはるさめが主力製品で、3代目となる吉川正博さんが経営や生産を実質的に担っています。
正博さんは若い頃、家業を継ぐという暗黙の圧力に反発を感じ、システムエンジニアをなさっていましたが、「自分の性格は、物づくり職人として生きる方が向いている」と、31才の時に家業を継ぐ決心をされたそうです。紹介は、奈良よつ葉牛乳を飲む会の清水章子さんです。
【国産本葛100% 葛の里】
●原料
国産本葛…高木久助商店(福岡県甘木市)・九州産。手掘りした葛の根をさらして作っています。さらし工場は福岡県甘木市と鹿児島の2カ所あります。
●製造工程
①本葛を水で混錬 ②蒸熱機で蒸す ③冷蔵庫で24時間冷却
④切断して麺線化 ⑤温風乾燥 ⑥選別、包装
●特徴
国産の本葛だけを使用した超高級な葛きりです。本葛だけを使って製造するには練り方のバランスや気象条件との兼ね合いが難しく、それだけ手間がかかっています。
高級和菓子に使うレベルのもので、鍋にはもったいないかもしれません。市販品のように中国産・韓国産の葛を使ったり、他種のでんぷんなどの混ぜ物や漂白をしていません。したがって少し茶色っぽい色合いをしていますが、これが本物の印です。歯切れがよく、サクサク食べられる食感が特徴。本物の葛きりを、ぜひ一度お召し上がり下さい。
※全くの自然素材につき、多少の品質のばらつきがあります。
●食べ方
黒みつをかけて・・・一番おすすめの食べ方です。
ハチミツ、きな粉などお好みに応じて食べる。
だしたれをつけて食べる
鍋具材として食べる
酢の物にする。
肉じゃが、吸い物のようなだしを吸う料理に。
葛きりに味がのっておいしくなります。
【葛の里 葛きり】
●原料
馬鈴薯澱粉(95%)…ホクレン・北海道産。
※遺伝子組み換えではありません。
本葛(5%)…井上天極堂(韓国産・中国産・国産のいずれか)
●製造方法
冷蔵庫での冷却時間が短い(2時間)以外は
「国産本葛100% 葛の里」と基本的に同じ製造方法です。
●特徴
北海道産の馬鈴薯澱粉に本葛を5%加えた、リーズナブルな価格の葛きりです。鍋やお惣菜に惜しみなく使えるでしょう。本葛100%に比べれば少しあるネバつき感は避けられませんが、戻りが早く、コシもあります。巾広タイプです。無色透明ですが、漂白剤などの食品添加物は使っておりません。
●食べ方
同上
【はるさめ】
●原料
馬鈴薯澱粉(50%)…ホクレン・北海道産。甘藷澱粉(50%)…鹿児島県経済連・国産
●製造方法
①原料を混錬 ②押し出し方式で、麺線形成 ③湯通し(90℃以上5分) ④冷凍(24~36時間) ⑤解凍(8時間) ⑥乾燥(3~5 日、天日干し) ⑦切断 ⑧選別、包装
●特徴
餅状に練った原料を、ごく小さな穴から強い圧力をかけて熱湯の中へ押し出す「加圧押し出し方式」で麺線を形成しているため、コシの強いはるさめになっています。大手メーカーのものと違い、冷凍工程がきちんとあるため、水分が凍ったあとの微細な麺 構造の中にだしがよく吸い込まれ、だしのりに優れています。甘藷澱粉は食物繊維が豊富です。
●食べ方
サラダ、酢の物のようにはるさめそのものを食べる食べ方がおすすめです/鍋。溶けてしまわないよう、しゃぶしゃぶのような食べ方で/おつゆ、スープ/ぎょうざ、春巻の具/素揚げにするとふくらみ、料理の面白い彩りになります。
●市販の葛きり、はるさめの問題点
本葛100%の高級な葛きりでも、原料の本葛が国産か輸入物かの違いがあり、品質・価格に差があります。「本葛」を名乗るには本来、他の澱粉の混ぜ物があってはいけないのですが、信用できないメーカーのものがあります。増粘剤としてCMCが使われた品もあります。
手頃な価格の葛きりはほとんどが馬鈴薯澱粉で作られていますが、より安い甘藷澱粉を使っているものは澱粉に色がついていますので、それを次亜塩素酸ソーダなどの漂白剤を使って漂白しています。
はるさめには一般的に、増粘剤としてCMCやミョウバンをつなぎに入れています。安い甘藷澱粉の配合割合を増やした場合、その着色を避けるため、混錬工程もしくは解凍から乾燥に移る工程で漂白剤を使っています。
昨年回収騒ぎがあった中国産はるさめには、漂白剤として国内では使用が認められていない過酸化ベンゾイルが使われていたため問題となりました。緑豆でなくより安いえんどう豆澱粉などが使われ、それを白くごまかすための使用でした。
ちなみに緑豆はるさめは国内ではまず製造されておらず、原料となる緑豆の栽培方法もよくわからない中国産です。このほか安価な澱粉としてトウモロコシ由来のコーンスターチを使っているものもあり、ポストハーベスト農薬、遺伝子組み換えが問題となります。
大手メーカーのはるさめは冷凍工程がないものがあり、そのため表面にはるさめ本来の水が凍結した穴がなく、つるつるでだしの味がのりにくく、おいしくありません。また、押し出し方式ではなく、ザルの目から原料を落とす落下式のため、押し出し式に比べてコシがありません。時間と手間をかけた、安全でおいしいはるさめを食べたいものです。
ー西川栄郎ー