天然酵母なのに甘みのある「おいしいパン」
2005年9月5週号
素材にこだわり、高い技術が伴えば、天然酵母でもおいしいパンが焼ける
オリジナルの国産小麦粉を開発するなどの原料へのこだわりと、手わざならではの風味のために手間を惜しまない製造方法から、甘みのあるおいしい天然酵母パンが生まれます。
「天然酵母パンといえば、すっぱくてボソボソ…いくら安全でも食べにくい」と思っている方は、本当においしい天然酵母パンに出会ったことがないのでしょう。
素材にこだわり、高い技術が伴えば、もちろん天然酵母でおいしいパンが焼けるのです。それに天然酵母パンは見た目には少量でも、市販のパンのようにやたらと空気を含ませていないので、満腹感があって結局お得です。
世界パンでは国産小麦粉と天然酵母を使って、生イーストのパンに負けないような、しっとりとして甘みのあるおいしいパンを焼いています。まだ若い工場長の今井英徳さんは、初代で祖父の今井懋(つとむ)さんの技術をベースに、ドイツの伝統的な技術に学んだ新たな工夫を重ね、おいしい天然酵母パンを焼く技術を身につけられています。
初代は1970年にパン屋を開業。ほとんど独学でパン作りを始めたことが幸いし、大手メーカーのような薬品に頼った個性のないパンではなく、独自の工夫でたいへん個性豊かなパン作りをなさっていました。
およそ30年前、よつ葉牛乳の共同購入運動が関西に拡がった頃、当時私たちの仲間で「安全な食べものを求める堺市民の会」の森田まれおさんが、今井懋さんに出会ったのがお付き合いのきっかけです。
世界パンが本格的に無添加の天然酵母パンを製造するようになったのは、オルターと出会ってからです。英徳さんのお母様で社長の與里子さんは、「新製品としてどんどん生まれてはどんどん姿を消していくようなパンを焼きたくない。ひとつひとつのアイテムを大事に育てていきたい」と、製品開発を進めてこられました。英徳さんはそんな期待に、祖父ゆずりの職人肌でしっかり応えています。
手作業を大切に手間を惜しまず・・・
原料の特徴は、まずなんといってもオリジナルの国産小麦粉の開発です。そのほか副原料も必ず現地に行って取引する姿勢を大切になさっています。
オルターでは、オルター仕様の原材料を指定して、さらなる安全レベルの向上に取り組んでいただいています。今後さらにオルターが取り扱えるレパートリーを増やしていただく予定です。
製造は、ミキサーを使う以外、手作業を大切に手間を惜しまず行っています。手でないと出せない味があるからです。14年前から始めた低温熟成法によってゆっくりと発酵させることで、小麦の風味・甘みがたいへんよく出たパン生地が作れるようになりました。
天然酵母のパン種を安定させるのが一番苦労した工夫だったとのこと。温度や湿度の調節も、蛍光灯のついた木箱を手作りするなどして工夫し、当初は気泡の多かったパンから今のようななめらかでおいしいパンへと、着実に腕を上げてきました。
今後もますますおいしい天然酵母パンを焼き続ける、世界パンのパンから目が離せそうにありません。
オルターオリジナル仕様・世界パンの天然酵母パン ※
※一部、生イーストパンも扱います。
オルター取り扱いの世界パンの原料は、オルター独自仕様です。マーガリンなどを使わず、離型剤を使わないため手分割にしていただくなど独自の工夫をしています。店売り、他団体売りとは仕様が異なります。
●原材料・天然酵母パンの場合
(定番扱い・ABCDのサイクル表示)
・国産小麦粉…横山製粉・世界パンオリジナル仕様
・種子島甘蔗分蜜糖…新光精糖(カタログ2000年4月1週号参照)
・赤穂の天塩…天塩(カタログ2000年4月4週号参照)
・天然酵母…ホシノ天然酵母
・レーズン…ネオファーム(カタログ1999年10月5週号参照)
・くるみ…ネオファーム
・よつ葉バター…よつ葉乳業(カタログ2000年8月3週号参照)
・全粒粉・ライ麦…横山製粉・北海道産
・菜種油…分割時に使用。影山精油(カタログ1999年10月1週号参照)
・発芽玄米…サンライス有機の会・秋田産有機米
・小倉あん…谷岡製餡(北海道産小豆)
●原材料・生イーストパンの場合
(スポット扱い・不定期に登場)
・生イースト…三共イースト(暫)
・レモンピール…いわき物産センター(暫)
・甘夏ピール…福田農場ワイナリー(暫)
・牛乳…よつ葉乳業(HTST)(カタログ2000年8月3週号参照)
・脱脂粉乳…よつ葉乳業
・グラニュー糖…日本甜菜製糖(株)・北海道産
・粉糖…三和澱粉工業(株)・北海道産。
・グラニュー糖、サツマイモ、デキストリン(暫)
●製造方法・天然酵母パンの例
①酵母生種を30時間熟成のあと冷蔵
②材料ミキシング(混合)、パン生地を冷蔵
③第1次発酵・28時間生地を発酵熟成、低温で熟成
④分割、生地を冷やす
⑤成型
⑥第2次発酵 ホイロ2時間
⑦焼成
⑧粗熱をとって包装
市販のパンの問題点
市販のパンの最大の問題は、ポストハーベスト農薬の汚染のある輸入小麦が原料に使われているということです。そのためパン食が日本人の健康を破壊している大きな原因のひとつとなっています。副原料についても、乳製品にはチェルノブイリ原発事故による放射能汚染のあるヨーロッパ産が使われたり、たまごなど畜産品には輸入穀物がエサに使われているためポストハーベスト農薬の汚染が心配されますし、飼料添加物、動物医薬品の問題もあります。
あん、クリーム、ジャム、カレー、レーズン、ナッツなども、詳しい解説は別の機会にしていますが、問題だらけです。
天然酵母で発酵させて、小麦粉のうま味をじっくりと引き出しているなら良いのですが、一般には生イーストならいい方で、イーストフードやドライイーストを使っています。
天然酵母パンは練りから焼き上がりまで3日かかりますが、イーストフードを使った流れ作業のいわゆるラインのパンはそれが数時間と格段に短時間で焼き上がります。コストは下がりますが、うま味が出るひまがないので、粗悪な副原料を使って味をごまかさなくてはならなくなります。イーストフードといっても、イーストすなわち酵母とは無縁で、発ガン性のある食品添加物・臭素酸カリウムをはじめ何十種類もの化学薬品のかたまりなのです。
山崎製パンがテレビのコマーシャルで「国産小麦パン」であることをアピールしていますが、その生地に使っているイーストフードには発ガン性の強い臭素酸カリウムを含んでおり、消費者を惑わす悪質なCMです。つけ加えれば、山崎パンのようなフワフワのパンはいくら食べても腹の足しにはならず、結局空気に高いお金を払わされていることになります。家計簿的には天然酵母パンの方がしっかりしていて、むしろ安くつくのです。
生イーストやドライイーストは酵母が使われますが、その培養培地に大豆(ポストハーベスト農薬や遺伝子組み換えの問題)、廃糖蜜(砂糖工業界の廃棄物)などが使われ、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)などキャリーオーバーの添加物が含まれています。
オルターでは野生酵母、天然酵母、できるだけ安全を確認した無添加の生イーストまでの使用を認めています。
パンを焼き型から外すための離型剤として、大手メーカーでは石油系の流動パラフィンを使っています。「機械に塗って使うのだから、これでいい」との考えのようですが、焼き上がったパンの表面にテカテカと光るほどついています。よほどましな町のパン屋さんでも、ショートニングを使っており、ポストハーベスト農薬、遺伝子組み換え、トランス脂肪酸(心臓病・ガン・精神病)などの問題があります。
生地の分割にも油を使いますが、その植物油などにもショートニングと同様の問題があります。その他パンには合成着色料、品質改良剤、合成ビタミンC(天然型とは違う)などの酸化防止剤をはじめ、様々な食品添加物が使われています。
ヨーロッパ人が伝統的に食べている小麦胚芽のある玄麦パンなら栄養バランスは優れているのですが、日本国内のパンはほとんどが精麦パンで、栄養的に偏っています。そこで玄麦パンを望んでも、酸化しないよう自家で製粉機を持っているパン屋はごく例外的で、一般には脂肪の酸化に注意が払われていないため有害な過酸化脂肪が心配な玄麦パンになってしまっています。
ー文責 西川栄郎ー