日本の水産を守る第2弾「無添加ベニズワイガニ」
2005年10月2週号
境港に水揚げされるベニズワイガニは、その殆どが殻を除いたカニ棒肉やくずれ身に加工されます。酢の物、ちらし寿司、カニグラタン、カニコロッケ、ピザなどにご利用下さい。
豊富な水産資源があるにも関わらず、既存の水産流通の中で適切に活用されないまま、漁業者にとってはもとより消費者にとっても、その自然の恩恵をもたらしてはいないものがあります。
オルターは、そんな日本の水産を守る活動に立ち上がり、モデルのひとつとして北海道標津漁協の白鮭の取扱いを開始しました(カタログ2005年4月5週号参照)。今回は日本の水産を守る第2弾として、境港に水揚げされているベニズワイガニをご紹介します。
ベニズワイガニはエビ目クモガニ科に属する日本固有種で、日本海の深海動物を代表する食用カニです。鮮やかな紅色が特徴です。分布は日本海、オホーツク海、銚子以北から北海道に至る太平洋岸で、500m~2000mの水深帯に多く生息しています。深海のカニであるため、漁獲の対象となったのは比較的新しく1962年頃以降のことです。鳥取県の境港は国内トップのベニズワイガニの水揚げ港です。
ベニズワイガニは近縁種のズワイガニと比べてその味がやや落ち、肉質が水っぽく身入りがいまひとつとされ、味覚上さほど高い評価を受けていません。そのため市場では生鮮やボイルで出荷されることはあまりなく、そのほとんどは水揚げ後、ただちに加工工場に運ばれ、そこで抜き身加工され、殻のない形で流通に回っています。
境港市にある北陽冷蔵(株)は1967年に創業した水産冷蔵庫会社ですが、ベニズワイガニの加工工場としては境港市内最大手です。
流通がブラックボックスの中にあって、さっぱりわからなくなっている
これまで、抜き身加工したカニ肉はその殆どが大手メーカーに売られ、末端の消費者に届くまでに高いマージンが上乗せされるだけでなく、様々な粗悪な原料と混ぜられたり、食品添加物を使用されたりしています。一番の問題はその流通がブラックボックスの中にあって、さっぱりわからなくなっていることです。
このままでは、漁業者や加工段階で持続可能な再生産価格が維持できないだけでなく、消費者にとっても無添加の安全なカニをいつまでも食べられないことになります。
そのためオルターでは、北陽冷蔵(株)と協力して、無添加のカニ加工品を共同開発し、一人でも多くの消費者にその価値を理解していただけるよう取り組みを始めることにいたしました。
北陽冷蔵(株)をご紹介いただいたのは、標津の鮭と同じく、藤田八束水産学博士です。
北陽冷蔵(株)の無添加ベニズワイガニ
●原料
ベニズワイガニ…日本海の水深800m以上で、カニカゴ漁業で漁獲したカニです。カニカゴは鉄製の枠に合成繊維の網を張って、中にカニの好物であるサバを吊してあります。このカゴを延縄で50m間隔に150個付けて漁を行います。境港へは地元漁船のほか、ロシア船なども水揚げしています。
●加工工程
①脱甲
北陽冷蔵(株)開発の自動脱甲機でカニの甲羅をはがし、みそを出し、エラを取り除きます。自動化により、カニの鮮度を落とさない作業が可能になりました。
②ボイル
自動脱甲機で半身になったカニは、洗浄機で余分なものを洗い落としたあと、ボイル機へ運ばれます。ボイルは2段階で行われます。第1段階は塩水で約60℃で7分間茹でます。低温から茹でてカニの身から血液を取り除きます。血抜きが不充分だと変色の原因となるからです。第2段階はスチームで100℃ 5~7分蒸します。蒸しあがったカニは素早く冷水で冷やし、カニの身を締め、蒸したてのおいしさと品質を保ちます。
③カット
茹であげたカニは、脚・つめカット機で、脚、つめ、胴に切り分けます。
④棒肉採り
切り取られた脚は、自動棒肉採り機で身を殻から押し出します。ここで押し出された身は棒肉以外に精棒、精肉に分類されます。
⑤落とし身採り
胴の身から、落とし身機で落とし身を採ります。
⑥急速冷凍
それぞれのカニ身を急速冷凍します。市販品ではこの段階で調味液(食品添加物を含む)が使われますが、オルター仕様ではカニの身以外一切使いません。
今回ご紹介するベニズワイガニの種類
●紅ズワイガニ・姿(ボイル)
1匹丸ごとの茹でガニです。冷凍すると身がパサパサになり風味が損なわれるため、氷温扱いです。届いて1~2日目にはお召し上がり下さい。
●紅ズワイガニ・棒肉
カニの脚から採った棒状の身です。酢の物やちらし寿司のトッピングなどに使えます。
●紅ズワイガニ・くずれ身
棒肉以上に形のくずれた身です。ばら寿司、ピザなどのトッピングに使えます。
●紅ズワイガニ・精肉
くずれ身以上にさらに細かくくずれた身です。より徳用な材料として、カニグラタン、カニクリームコロッケなどにお使い下さい。
市販のカニ製品の問題点
カナダなど海外から入る生ガニは、黒変防止のため亜硫酸塩が使われています。カニ身製品の場合、プリンプリンに見せかけるために乳化剤が使われたり、食品添加物を含む粗悪な調味液が使われています。スーパーなどでは、カニ肉に見せかけるために合成着色料などの食品添加物をたくさん使用した練り製品まで売られています。
ー文責 西川栄郎ー