貴重な国産小麦グルテンで作る麩
2005年11月1週号
おいしさと安全性を追求した結果、国産小麦粉を100％原料にした、貴重な国産小麦グルテンを使って作られた麩です。
麩というと金魚のエサ？と思っている人がいませんか。使っている人でもせいぜいお味噌汁の具くらいではありませんか。麩は豆腐と並んで、日本人にとってたいへん貴重な蛋白源なのです。
昔、蛋白源が乏しかった頃、保存がきき高蛋白であることから、禅宗のお坊さんたちは麩をたいへん大切に扱っていました。禅宗の精進料理として中国からもたらされたのが麸の始まり。
麩は日本の伝統食のレシピの強い味方なのです。オルターのおしゃべりクッキングの講師としてお招きした「加賀麩司 宮田」の宮田佳主子さんは、麩料理の研究家として、また麩料理の店「鈴庵」のオーナーとして、素晴らしい麩の料理を紹介なさっています。
麸は小麦粉の蛋白質であるグルテンを原料に作られる食べものです。しかし、現在ではその原料となる小麦粉のほとんど全てがポストハーベスト農薬のある輸入小麦にとって代わられているのです。グルテン部分は残留農薬が一番心配な部分ですので、ポストハーベスト農薬のある小麦がそれに使われていることはたいへん心配なことです。
自然食業界のいわゆる「無添加」の麩が、じつは輸入小麦を原料にしていることは放置できないことだと思っています。
今もなお丹念な手作りです。
古都金沢の老舗「加賀麸司 宮田」は明治8年創業以来、麸一筋の会社です。“加賀料理”と呼ばれる独自の食文化が今も息づく古都金沢。中でも“加賀麩”は金沢の人々の食卓になくてはならない食材です。だからこそ守ることのできたのれんを、「加賀麸司 宮田」は戦後も守り続けてこられました。
戦後、麸の原料は輸入小麦に代わってしまいました。しかし宮田千暉さんは「伝統の味は輸入小麦では出せない。日本古来の麸に合う、のびのある国産小麦に戻すべきだ」との考えに至り、今日のように国産小麦グルテンを使われるようになったのです。その後、輸入小麦のポストハーベスト農薬の問題にも気付かれ、ますます国産小麦グルテンを使うことの大切さに確信を深めておられます。
輸入小麦のグルテンは成分が安定していて焼きやすいものです。それに対して国産のものは品質にムラがあるものです。そこで、その国産小麦の中で品種の良いものを求めた結果、大きな製粉会社のものでは得られず、札幌の小さな製粉会社で求めるものを見つけ、その国産小麦を100％使って麸作りを続けていらっしゃいます。今では「やはり日本の食品には、日本でできる小麦が適している」と確信をもっておられます。
この国産小麦グルテンはたいへん貴重なもので、他に国産小麦グルテンだけで麩を作っているメーカーはほとんど知られていません。宮田さんは早くから国産小麦グルテンに目をつけ、原料を確保されてきました。今では製粉会社の一番のお得意です。麸のグルテンは小麦の外側部分からとるので、小麦の内側部分からとるパン用小麦としての上質粉とも両立できるのです。
宮田さんの麩作りは、今もなお丹念な手作りです。生産者の顔がいつでも見える作り方を心掛けていらっしゃいます。職人の勘や技術を重んじ、常に新しい麸の魅力を提案されています。
だからこそ、こんなにもおいしい麸ができているのです。お味噌汁に使えばしっかりとした麸で、車麸でピザを作ってみたら、今までにないおいしさで、家族にも大好評です。
宮田さんの麩のご紹介は神戸消費者クラブからでした。
宮田さんの焼麸・生麸
◇原料
●宮田オリジナル仕様国産小麦グルテン…北国フード。横山製粉の国産小麦粉100％を原料に、小麦に食塩を加えて練り、水洗いしてでんぷんを除いたもの。でんぷんをぎりぎりまで落とした高純度のオリジナル仕様のグルテンです。
●国産小麦粉…北海道産
●餅麩の場合
モチ米粉…国産モチ米
●生麩の場合
よもぎ…青森県のよもぎ粉
ゆ ず…国産ゆずをスライスして冷凍しておいたもの
ご ま…大村の練りごま（中国産）
あ わ…石川県産・無農薬
くるみ…国産和ぐるみ
◇製造方法
●焼麩
国産小麦グルテンと国産小麦粉を練って焼く。グルテンはコシが強すぎても弱すぎてもダメ。その日の天候や温度によって状態が変わるので、練りの段階で加減するのが一番苦労するところ です。小麦粉が多いと軽い麸になり、少ないと重たい麸に仕上がります。
餅麸の場合は、以上にモチ米粉を加えています。車麸の場合は木の棒に巻いて、赤外線電球の直火で焼き上げています。おつゆ麸などは鉄板の上で蒸し焼きにして白く仕上げています。
●生麸
国産小麦グルテン（同左）とモチ米粉（同左）をベースに、よもぎ粉、ゆず、練りごま、あわ、くるみをそれぞれ混合して、蒸して仕上げています。しっとりとまろやかな口当りは、風雅のひとことに仕上がっています。
市販の麩の問題点
麩の原料は小麦粉グルテンです。小麦粉にはポストハーベスト農薬の問題があり、脂溶性が高いグルテン部分には農薬が残留しやすいので心配です。
ー文責 西川栄郎ー