畳を新しくするときは、良質な国産畳をおすすめします。
2005年11月4週号
シックハウス症候群の原因にならない畳表や、本床の畳をお届けできるようになりました。良心的な畳屋さんをご紹介する、新しいシステムです。
爽やかな香り、い草の畳に寝転ぶ気持ちよさ……。
い草は古のときより、日本の風土に欠かせないものとして愛されてきました。新しい畳は子供の脳の発達にもよいといわれています。
しかし現在、日本国内の畳の約85%は中国産のい草を畳表に使ったものになっています。中国産畳表は、すぐにすり切れるなど耐久性が悪いだけでなく、農薬や着色料などの化学薬品の使用があります。畳の床も、昔のようなタタミ床がほとんどなくなり、代わりに発泡スチロール製などプラスチック、化学薬品まみれのものになっています。これらはシックハウス症候群の原因のひとつにもなっています。そのため、安全・安心な畳表替えや本床の畳の扱いを希望する声が寄せられていました。
この切実な声に応え、オルターへ野菜、い草製品を提供していただいている水の子会の上村茂則さんと、水俣市環境マイスターである渕上畳店の渕上学さんにご協力いただき、安全な畳表替えや新築などに際して本床の畳の注文に応えられるシステムを、オルターが全国に先がけて始めることになりました。(株)水の子 日本産直畳振興会の畳表は、森林浴をしているのと同じ「フィトンチッド」という成分が爽やかに香ります。また空気を浄化しますので、あなたやあなたの家族を守ります。
40戸を越える仲間の農家と水の子会
水の子会の代表・上村茂則さんは、1976年に水俣病患者の支援に訪れていた青年との出会いの中で、「水俣病の教訓に学び、農業を営む自らが加害者的立場になるのはやめたい」と有機農業を志し、3年後に有機農業に転換されました。その後、幾多の困難を乗り越え、現在は仲間の農家40戸を越える水の子会を率いておられます。
水の子会の地元・熊本県八代郡は、500年の伝統をもつ日本最大のい草産地です。
しかし近年、中国産のい草に押され、産地は壊滅寸前です。上村さんは、地元のい草農家の現状を目の前にして「まわりの農家が苦しんでいるのを看過するのは人間として正しいのか」という思いで、少しでもい草表の需要につながるよう、い草製品の普及にも尽力しておられます。
2002年には地元産業や行政を巻き込んで、い草博覧会まで開催しました。
私はこの主旨に賛同し、迂回的にい草製品を扱うのもいいが、直接的に国産い草畳表を取り戻す活動をすべきだと考え、今回のシステム作りを提案させていただきました。シックハウスに苦しんでいる人が多い今、品質のよい安全な畳を適正な価格で提供することは、火急の課題なのです。
日本で初めての畳のリサイクル・・・
このシステムには全国の畳屋さんの協力が必要ですが、うってつけの助っ人がいらっしゃいました。水俣市で畳店を営む渕上学さんです。渕上さんもやはり水俣病問題をきっかけに環境問題に出会い、健康に配慮したもの作りを志した方です。
約10年前、水俣の同業者5軒と化学素材を外した天然素材の健康畳の取り組みを始め、地場のい草を使い、防虫剤などを使わない畳をまず市営住宅などに利用してもらうことに成功。また、廃棄に際して焼却でダイオキシンを発生するという問題の解決として、日本で初めての畳のリサイクルに取り組まれました。
リサイクルできず廃棄する場合には、製鉄工場やセメント工場に持ち込んでダイオキシンが出ないように熱原料にしています。
渕上さんは、これらの活動で水俣市から水俣市環境マイスターとして認定され、全国の畳屋さんにも「水俣に渕上あり」と有名になり、講演や事例紹介で全国に呼ばれるようになりました。そこで、健康畳に取り組みたいという志をひとつにする熱心で良心的な畳屋仲間との出会いを得たのです。これら全国各地の良心的な若い畳屋さんが、今回のシステムにご協力くださることになっています。
オルターの会員またはその知人で、畳の表替えを希望する方や新しい畳を作ってほしい方は、その旨をオルターまでご連絡下さい。良心的な畳屋さんがご相談・寸法とり・見積などを経て施工させていただきます。オルターへのお問い合せも歓迎です。
畳を新しく替えるときには、危険な薬品を使っていない天然素材のものをぜひお選びください。
(株)水の子 日本産直畳振興会
水の子の畳表は、八代の減農薬栽培(定植時に除草剤と殺虫剤1回のみ使用していますが、近い将来、無農薬も可能になる見通し)のい草を使用。品質的にも、すぐにすり切れない耐久性にも優れた製品です。い草表の巾も余裕のある高級なものを使用します。
もちろん防虫加工や着色剤などは使用せず、粘土質の泥につけ込む昔ながらの染色方法「泥染め」を施しています。泥染めには淡路島で産出する石灰岩を使います。泥染めは、い草の美しい緑色を残すだけでなく、徐々に乾燥するためにい草の茎の収縮が抑えられ、丸みが維持されて肌触りがよくなります。また原草の内部の隙間ができ、弾力性、柔らかさ、耐久性がよくなります。水の子の畳表は、それ自体がシックハウスの原因にならないだけでなく、屋内に漂う化学物質(例えばアセトアルデヒド、ベンゼン、二酸化窒素など)を吸着する効果も知られています。また湿気を吸い、調湿にも役立ちます。
施工にあたっては、畳表の縦糸の種類として綿1種類・麻3種類、ヘリには一般的な化繊の他に純綿も選べます。オプションで手織のゴザもあります。見た目に美しいと高級品扱いされていても実用性の低いヒノサラサのようない草製品はおすすめしません。
畳の床は、わらの本床もご紹介できます。また、マンションなど高気密・高断熱で室内で洗濯物を干している部屋などで、換気や通気が悪く結露ができるような条件では、使いたくてもわらの本床では湿気でカビやダニに悩まされる場合がありますが、そんな部屋には間伐材の端材などの木質繊維のボードでできているインシュレーションボードの床をご紹介します。
それぞれ違う条件の建物や部屋に合わせて、できる限り天然素材が使えるようアドバイスもします。畳の表替えの場合は、基本的には朝引き取って夕方には納品できます。
価格も一般の畳屋さんに頼むより安く、良心的な設定となっています。支払いはオルターを通しますので、万が一のトラブルがないよう、また適正な仕事水準が保たれるよう配慮します。古い畳の処分などもお受けします。
市販の畳の問題点
昭和30年代頃を中心に、大掃除のときに畳の下へDDTやBHCなどの有機塩素系の農薬をまいたものです。現在では始めから床を有機リン系農薬をしみこませたシートに包み込んでいます。
その使用量は面積比で田んぼの21倍の数値を示したこともありました。これらの農薬は畳が直射日光で温められると、室内にもうもうと蒸発してくるのです。最近ではこういうやり方は、さすがに少しずつ見直されてきています。
畳表には、発ガン性のマラカイトグリーンや有害な重金属を含む着色剤などで、着色が施されているものがあります。中にはあまりにも粗悪な着色状態で、拭いても拭いても雑巾に色がつく畳、白い服や靴下に色がつくような畳まであるのです。
現在の床は、軽量化やわら不足などが理由で、そのほとんどはダウ化工社製のスタイロなど発泡スチロール系やビニロンでできており、そこからキャリーオーバーの化学薬品が蒸発しています。マンションなどコンクリートの上に板も敷かずにそのまま畳を置く場合、ビニールで床をラッピングしている場合もあります。
畳表にプラスチックなどのコーティングをしている場合もあります。い草を使わず、コーティングした紙やビニールでできているものさえあります。
畳が本来もつべき湿気を調節するという作用などまったく期待できない代物といえます。これらの畳は、焼却廃棄に際してダイオキシンも発生します。
国内の約85%を占める中国産のい草畳は、早刈りで完熟していないので、3年以内にすり切れてダメになってしまうようなもろい品質のものが出回っています。また、価格を安く見せかけるため、面積当たりのい草密度も落としているため、すぐにすり切れてしまうのです。ちなみに百円ショップで売られているようなゴザは、丈が短く本数が少なく、本来は廃棄されるような原料が使われています。中国産の畳表は栽培時の農薬、化学肥料だけでなく、輸入時に農薬薫煙が施されています。この中国産を国産と偽装しているケースもあります。
最近、リフォーム業者など異業種が畳業界に参入してきています。これらの業者の中には、畳を作る際に糸で縫うのではなく、コストを安くするためや、誰にでも簡単に作業ができるように金属製のタッカーで留めているだけで建売住宅やリフォームに持ち込んでいます。
こんな畳の上で子供が飛び跳ねているうちにすべって転んで、留めているヘリがめくれて金属の先が現れ、怪我をする事故さえ起きています。しかし、このような糸で縫わない畳を取り締まる法律はまだありません。
薬品を使って柔らかくして作っているヘリなし畳がありますが、無理やりに曲げたところからはがれ、寿命は短いものです。畳表を縫うミシンの間隔や糸の質など、手抜きはいくらでもあり得ます。安い製品にはご用心ご用心。畳もまた、見かけの姿が畳ならいいというものではないのです。
ー文責 西川栄郎ー