着心地の優れた天然素材を生活に取り戻そう ライブコットン(1)

2004年11月2週号

 現在、一般に普及している化学合成繊維は、安価ではあるのですが、一方で使用されている繊維自体や染料、洗浄剤、柔軟剤、抗菌加工剤、難燃剤などの化学物質によって、アレルギー、アトピーの原因になるだけでなく、静電気が発生するなど、肌触り、着心地が悪く、ストレスを高め、さらには生産から流通、廃棄に至る全行程で環境に著しい負荷を与えています。
 ライブコットン(中村寿雄社長)では、できるだけシルク、オーガニックコットンなど人にやさしい天然素材を用い、その素材をできる限り生かし、生産現場でも環境に負担をかけない衣料品製造を心掛けています。

業界では一般に表側にシルクを配するなど見た目重視の織り方をしていますが、肌に当たる部分にこそ天然素材を持ってくるべきだと考え、ライブコットンでは従来とは逆のやり方、着心地重視で製品造りを行っています。当初はこのライブコットンの要求に対し、委託工場では「なぜそんなことをするのか?」という反発もありました。
 ライブコットンでは無蛍光、無漂白を当たり前にしています。生成のままでいけるものは生成にし、タグなども無蛍光の素材に変えています。 業界では表糸だけを表示するやり方をしていますが、ライブコットンでは、裏糸も表示するなど全表示を行っています。
 ライブコットンは前身の会社から1998年に改名しました。1983年に自然食品店として愛知県岡崎市で創業した前身の会社は、ヘルシーメイトという会社で、アレルギーを持つお客さんからの「安心して着ることのできる衣料品はないですか」という声から、1990年に衣料品の卸部門を設立しました。
 岡崎市は、かつて三河木綿で栄えた地場産業地帯で、多くの紡績工場がありました。その中で、質の高い絹紡紬糸を生産していた大見毛糸紡績の社長とヘルシーメイトの社長が同じ町内会の仲良しだったことから、5本指ソックス、レッグウォーマーなどくず繭から作った天然素材の絹紡紬糸製品を売り出したのが始まりでした。
 現在、ライブコットンでは、シルクやオーガニックコットンを使った様々な製品が、多くの協力工場によって作られています。それらをこれから月に1度くらいの割合で、シリーズでご紹介していきます。今回は、その協力工場のひとつ「神戸生絲」の製品をご紹介します。

ライブコットン委託加工工場 神戸生絲のシルク製品
 シルクは、アレルギー体質や肌の弱い人にも安心です(ただし、シルクアレルギーの人もまれにはいます)。吸湿性がよいだけでなく、放湿性(透湿性)にも優れています。
 だから、サラサラして気持ちがよいのです。合成繊維と比べて、静電気の帯電も起きにくく、不快なピリピリもありません。防しわ性、耐磨耗性、黄変、脆化はやや問題がありますが、生体順応性、紫外線吸収放射性、保温性、難燃性、引っ張り強度、光沢、色彩、風合い、吸気、含気性、吸音性は優れています。
 シルク100%の製品は、数少ないのが現状です。パンストやソックスなどは伸縮性が求められますので、ナイロン、ポリウレタンを配しなければなりません。
 ライブコットンでは、繊維の太さや織り方を工夫して、肌に当たるところをシルクにし、シルクの欠点を補う、それら化学繊維が肌に当たらないようにしています。もちろん、シルクの心地よさを味わっていただくよう、できる限りシルクの混率を高める製品造りを心がけています。

◆洗濯の注意
 約30度のぬるま湯で、石けんで手洗いし、弱く絞り、日陰干しして下さい。洗濯機の場合はネットを使用し、弱洗いです。塩素系漂白剤の使用は禁止です。シルク部分が褐変してしまいます。

◆絹糸の解説
・生糸…家蚕(カイコガ)の長繊維の製品
・絹紡糸(けんぼうし)
   …生糸にできない繭などの比較的上質な絹ワタを紡いだ糸。
・絹紡紬糸(けんぼうちゅうし)
   …繊維の長さが4cm以下のくず繊維(ノイル)を紡いだ糸。

■ 健康ソックス ■
◆原料
・表地
①綿…80%、中国産一般綿
②ナイロン…17%
③ポリウレタン…3%
・肌側生地
①シルク(絹紡紬糸)…80%、中国産
②ナイロン…17%
③ポリウレタン…3%
カラーの場合の染料は、化学染料。

◆製造工程
・絹紡紬糸
①中国産落ち絹毛(作業はタイ)
②紡績
③染色(ワコー染色)
・綿糸
①綿花(作業は中国)
②洗い
③紡績
④シルケット
⑤染色(オザワ染工)

◆製品化
①編み立て(鈴木靴下)
②ロッソ※(関西メリヤス)
③セット
④検品
⑤加工
※つま先縫い
◇ 特徴 ◇
 肌に当たる側がシルク生地、表側が綿生地の2枚合わせのソックスです。この靴下1足で、シルクと綿の2足分を重ねて履いた状態になります。シルクの吸湿性の良さを発揮し、綿がシルク生地の弱さをカバーします。編みたては国内で丁寧に行っていますので、洗濯した後も、つま先のごろつきもなく、スムーズに履くことができます。冬のあったかソックスとしてお勧めです。

■ シルク中厚スパッツ8分丈 ■
  シルク中厚スパッツ5分丈
  シルク中厚タイツ
◆原料
①シルク(絹紡糸)…70%、ウズベキスタン製
②ナイロン…25%
③ポリウレタン…5%
カラーの場合の染色は、化学染料。

◆製造工程
①繭わた(ウズベキスタン)
②紡績
③染色(日本)…先染め糸使用

◆製品化
①編み立て(高田メリヤス)
②セット
③縫製
④検品
⑤加工
⑥検針
◇ 特徴 ◇
 絹紡糸を使用していますので、サラサラした使用感です。同じシルクでも絹紡紬糸のようなザラつきはありません。また、ウールなどのチクチク感もありません。
 吸湿性、放湿性に優れ、蒸れにくく、適度な厚みがありますので、保温性も優れています。ヒップ側マチ付です。市販品はほとんどがナイロン、ポリウレタン製です。シルクコーティングした「シルクプロテイン加工」の製品も出ていますが、本品はシルク糸そのものを使用しています。

■ 絹混・厚手パンティストッキング ■
◆原料
①ナイロン…65%
②絹(生糸)…30%
③ポリウレタン…5%
ヒシマチ部分は綿×ナイロン

◆製造工程
①絹生糸
 原糸はブラジル産、染色加工は京都蝶理。
 絹の染色堅牢度を維持するためと、編み立てをスムーズにするため、先染め糸を使用。糸染め時は、絹生糸のセリシン落としなどの洗浄に石けんを使用。滑りをよくするための柔軟剤は、残念ながら合成界面活性剤使用。
②ナイロン12D
 絹の補強と、表面をより平滑にするために使用。絹が肌面、ナイロンが表になるようプレーディング編み。
③SCY20-40
 ①+②の交縮糸
 ①+②+③を交互編

◆製品化
①編み立て(㈱エムワード)
 絹のみ先染め。その他は無染色にて編み立て。
②縫製工程(松本繊維)
 トゥ先はトゥクローザーで縫製。ラインは手縫い縫製。
③検針工程
④染色工程(新光㈱)
 先染め糸に合わせ、ナイロン染め。機械油の除去、柔軟剤は、残念ながら合成界面活性剤使用。
⑤セット加工
◇ 特徴 ◇
 シルク(生糸)を使用した、少々厚手のパンティストッキング。肌に当たる部分はシルクで、強くてしなやか。レッグ部、パンティ部ともオール絹混タイプ。つま先、かかと補強。履きやすいヒシマチ付。

※シルクDCYの構造
シルクDCY系とは、ゴムのように伸びる繊維ポリウレタンを芯に、ナイロンをカバーリングし、その上にシルクを巻きつけた3重構造のシルクカバーリング糸です。
※断面
ナイロン糸の太さより、シルクDCYの糸の太さが大きいので、肌に触る部分は絹100%。自然の肌触りが伝わってきます。

■ 野蚕シルク・マルチウォーマー ■
◆原料
①野蚕(エリ蚕)絹紡糸…86%、中国製
②ナイロン(ブーメロン)…14%
縫糸はポリエステル

◆製造工程(糸)
①精練
②晒し
③水洗
④乾燥
⑤巻き上げ

◆製品化(ラック産業㈱)
①編み立て
②検品
③縫製
④仕上げセット
⑤検針、検品
◇ 特徴 ◇
 エリ蚕は多孔質で、吸湿、放湿性に優れ、使い心地がとても爽やかです。シルク混率を高め、細かい糸を使用していますので、とても柔らかい肌触りです。特殊ナイロン(ブーメロン)を使っていますので、圧迫感がなく、縦横斜めにソフトに伸縮します。膝、肘、脛などに使えます。
1本が約10gと小さくて軽いウォーマーなので、ハンドバッグなどに入れても嵩張らず、外出時のちょっとした冷え対策にピッタリです。

■ 草木染め・野蚕シルク腹巻 ■
◆原料
①シルク(エリ蚕絹紡糸)…75%、中国産
②ナイロン(ブーメロン)…25%
草木染アースレッド…インドアカネのアルミ媒染
   アースイエロー…エンジュのアルミ媒染
   アースブラウン…グァバの鉄媒染+泥染
縫糸はポリエステル

◆製造工程(同上)
◆製品化(同上)
◇ 特徴(同上) ◇
 草木染めだから、肌の弱い人も安心。ポケット付なので、カイロなどを入れられます。

■ 野蚕シルク・おやすみマフラー ■
◆原料
①野蚕(エリ蚕)絹紡糸…65%、中国産
②ナイロン…30%
③ポリウレタン…5%
縫糸はポリエステル

◆製造工程(同上)
◆製品化(㈱石野縫工所)
◇ 特徴 ◇
 肌に当たる対策は、優しく温かいエリ蚕絹紡糸のパイル。肌触りがとても気持ちよく、おやすみ時の首周りの冷えから守ります。

■ シルクコットン厚手肩ウォーマー ■
◆原料
①エリ蚕絹紡糸…50%
②綿…50%、一般綿
縫糸はポリエステル

◆製造工程(同上)
◆製品化(同上)
◇ 特徴(同上) ◇
 おやすみのときの肩の冷えを防いでくれます。

   -文責 西川栄郎-

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