手で皮をむいているみかんジュース フルーツバスケット
2002年3月2週号
フルーツバスケット代表の加藤保明さんは、関東の消費者グループ、大地を守る会の元スタッフでした。生産者と消費者のパイプ役をしているうちに、自ら「ものづくり」に就きたくなり、1987年に農産加工場としてのフルーツバスケットを設立されました。加藤さんにとって、フルーツバスケットは有機農産物を加工することによって、第1次産業である(有機)農業を応援していくとともに、地域が元気になるお手伝いをする、都市と農村を結ぶ基地です。有機農業を発展させるためには、その余剰を生かせる農産加工が重要な役割を果たすと考えられています。フルーツバスケットの工場は、大地を守る会の低温殺菌牛乳の生産地、静岡県の丹那にあり、ジュースやジャムをはじめ、さまざまな農産加工を行っています。富士山の見える箱根南麓の豊かな自然の中にその加工場があります。
1997年、JA、町を中心に第三セクターによる地域興し事業「酪農王国オラッチェ」が立ち上げられていますが、フルーツバスケットはその中心的な存在です。オルターが扱っている酪農王国「風の谷のビール」も、このオラッチェで製造されています。フルーツバスケットでは、加工用原料は提携している農家のものを扱っています。
加工するものだからといって、一般の農家がしているような鮮度の低下したものでも良いというやり方はなさっていません。原料の収獲時期、保管方法、荷扱いまで注意を払い、生き生きとしている状態で工場に入れてもらうように、提携農家にお願いなさっています。くたくたになった原料から、おいしいものは作れない。50点のもので、100点のものは出来ないからです。
フルーツバスケットのみかんジュース
特徴
・木なり完熟の温州みかんを使います。
・原料の鮮度を大切に。
加工に回すものでも、生食用同様の
鮮度管理をしています。
・みかんの皮は手でむいています。
皮のまま搾るのが一般的ですが、そうするとどうしても皮の苦味が入ってしまうので、大変な手間ですが1個1個手でむいています。安全性も、皮のままより高くなります。大量に生産するラインを使う場合も、自動的に皮をむく機械を使用なさっています。
・ストレート果汁です。
着色剤などの食品添加物や水など、一切加えないストレート果汁です。パルプ分を除去するような過度の遠心分離をかけず、加工度が低いため固形分すなわち繊維質も多く含むコクのあるジュースに仕上がっています。
・リパックをしていません
大量生産するみかんジュースは、収穫期にいったんガロン缶(1斗缶)へ搾った果汁を詰めておき、後からビン詰めを行うのが通常のやり方です。この方が生産効率がよいこと、賞味期限など日付表示を新しく見せかけることができるからです。しかし、2度の加熱殺菌工程をくぐることになるため、風味も低下するなど品質が犠牲にされています。また、冷蔵コストを下げるため、常温保存をしていることもあり、風味低下などの経時変化が避けられません。フルーツバスケットでは、このようなリパックをしていません。搾汁した果汁は、即ビン詰めしていて、文字通りフレッシュなジュースです。だから、風味も、香りもよいのです。
原料
無農薬の温州みかん
フルーツバスケットでは、オルターのみかんの生産者でもある長崎有機農業研究会の低農薬の温州みかんなど、低農薬のみかんもジュースになさっていますが、今回の企画については下記の無農薬の温州みかんに限定していただきます。
生産者…清水安全な食品を作る会(おてんとうさま)
青木大寿、渡部仁、望月俊昭他
農薬……無農薬栽培
肥料……自家配合(菜種粕、大豆粕、魚粕、カニガラ、米糠、骨粉(改善予定)
製造方法
温州みかんを収獲する11月下旬~2月下旬に搾汁しています。
①みかんを皮のまま80℃15分、お湯の中で煮る。手でむきやすいように皮をふかふかにします。
②手作業でみかんの皮をむきます。
③パルパーフィニッシャーという搾汁機でストレート果汁を絞ります。
④貯蔵タンクへ移し、上に浮かぶアクをとる。
⑤殺菌90℃7~10秒
⑥熱いままホットパックビン詰め充填を行う。
・製造器具は使用後毎日バラバラにして、お湯だけで洗浄しています。一般では組み立てたまま、強力な洗浄剤で洗っています。
・搾りカスは堆肥にして畑へ。環境にも配慮なさっています。
一般市販のジュースの問題点
ジュースになるみかんも、当然農薬を使っています。市販品では、一般的な原料は国内産にせよ、輸入にせよ濃縮還元されたものです。それを水でもどして100%と謳っているものがほとんどです。厚生省はこんなやり方をジュースとして表示することを認めています。濃縮還元は真空釜で煮詰めますので、フレーバーがとんでしまっています。温州みかん100%のものは市場から姿を消し、みかんジュースと謳っていても、輸入のバレンシアオレンジとのブレンド物が主流です。昭和30年ごろ登場した粉末ジュースは人工甘味料(サッカリンなど)と合成着色料で出来たものでしたが、これは論外としても、一般のジュースもときには果汁を10%程度に低く抑えて、あとは合成着色料、コーンシロップ(遺伝子組換えトウモロコシ)や合成甘味料(サッカリン、天然系のステビアも催奇形性があり、パルスイートも脳障害を起こす。オリゴ糖と謳うものも、原料は遺伝子組換えのあるトウモロコシのコーンシロップ)、合成香料、酸味料、合成保存料などが使われています。
文責:西川栄郎