料理酒の常識を変える濃醇純米酒 大木代吉本店
2002年7月3週号
料理のために生まれてきた、調味料として使える純米酒
以前から会員より、料理酒の取り扱いがないかというお問い合わせをいただいておりました。それに対するオルターとしての回答は、一般の料理酒とは、安い(粗悪な)、まずい、古い、残った酒のことで、そのような飲めないまずい酒でおいしい料理が作れるわけがないので、オルターとしては料理酒そのものの取り扱いの予定はないこと、したがっておいしい純米酒を料理に使うか、三河みりんをお薦めしてきました。
しかし、このたび、以上のようなオルターとしての判断を訂正しないといけないような、まさに料理のために生まれてきた、調味料として使える純米酒があることがわかりました。もちろん、飲用してもおいしいものです。ごく少量の使用で、料理の旨みをぐっと引き立てることのできるお酒です。使用量がごく少量ですむので、市販の料理酒より結局、安上がりでもあるのです。
純米酒「こんにちわ料理酒」
純米酒の名酒の普及活動をなさっている片山雄介さんが、大木代吉本店のこの酒が料理酒として大変ふさわしいものであることを認め、オルターへもご紹介いただいたものです。近くこの「こんにちわ料理酒」をさらにバージョンアップしたものの出荷を計画していただいております。オルターではすでに、その料理酒を末広昆布の佃煮(カタログ2002年6月第5週紹介)、丸中のだし醤油(次週カタログでご紹介予定)、お蔵さんの惣菜などへの使用を開始、あるいは予定しています。
そのお酒とは、全国新酒鑑評会金賞を始め、これまでに数々の賞を受賞されている蔵元、福島県の大木代吉本店が造る、料理用に向く純米酒「こんにちわ料理酒」です。江戸末期(1865年)創業の大木代吉本店の4代目、大木代吉社長は純米酒の醸造工程でアミノ酸などの旨味成分を多く生成させるような発酵の工夫ができることを、あるお酒造りの専門家より教示され、その酒を造ったところ、ある高級水産加工業者がこの旨味のすごさに注目し、発売以来20数年間支持なさってきました。
淡麗辛口純米酒全盛の時代では、このような旨味はむしろ雑味として嫌われ、通常はいかにそのような雑味が出ないようにするかが、本筋の製造技術なのです。この旨味を大量に発生させる技術は、本来薄めて使える濃縮日本酒の作り方です。事実、「こんにちわ料理酒」を市販の安物のお酒に少し混ぜると、その市販の酒があっという間に高級な味に化けるのです。
大木代吉本店の調味料用濃醇純米酒 「蔵の素」
「こんにちわ料理酒」は、
①米のみを原料とし、
②呈味力が強く、
③有効成分が豊富な、
お酒で、アルコール度数17度以上、アミノ酸を主とするエキス分が563mg/100ml(東京農業大学酒類生産学研究室分析)というすごいお酒です。
旨味成分が、一般の料理酒の5倍以上、一般清酒の4倍以上です。みりんと比べても1.5~2倍以上あります。パラパラという程度の使い方でも、十分料理の旨味を引き出す力があります。グルタミン酸を多く含みますが、他のアミノ酸とのバランスもよく、化学調味料のような脳障害の恐れはありません。食感をふんわりとした口触りに和らげ、上品な味わいは、浸透性を高め、料理の煮崩れを防ぐ、肉魚の臭みを消し、照り、つやをつけます。
おいしいお酒であるにもかかわらず、自らの味は主張せず、食料の味を引き出してくれるお酒です。ありとあらゆる食材とうまく調和してくれます。炊飯、吸い物、煮物、焼き物、炒め物、漬物、麺つゆなど、あらゆる料理に使って、超一流の料理人の味にしてくれるのです。
使用量は控えめに、ごく少量からお試し下さい。
― 原 料 ―
●お米:地元特産米
●水 :地下100mから汲み上げる地下水。那須山系の伏流水と言われている。
先代の南部杜氏にかわいがられ、その南部杜氏の急死を受けて、杜氏をまかせられるようになった人です。いわば素人同然で、へんにお酒造りの既成概念やプライドにしばられていなかったことや、身につけていた科学的見識が、旨味の豊かな新しいお酒造りに役立たれたのでした。鈴木杜氏の手で、昔からの職人技能と科学力が融合できたことが、まさに奇跡の「こんにちわ料理酒」の成功につながったのだと思います。鈴木杜氏は、新しい酒造りの技術だけでなく、昔は重労働だった酒造りの仕事を女性でも製造に携われるよう、重量運搬や荷役の仕事を機械化するなどの工夫もなさいました。
製造工程は、米研ぎから麹作り、発酵期間などですべてに工夫がありますが、基本は通常の純米酒と同じです。
冷水の熱交換機を使って、仕込みタンクの温度を調整しています。ここの温度管理で、酒粕に逃す旨味をいかに最終的に酒の方に含ませるかが、旨味のある純米酒を作るコツです。通常の純米酒は、珪藻土濾過を行うのですが、「こんにちわ料理酒」は濾過をしません。活性炭の使用もありません。
醸造用アルコール、糖類、グルタミン酸ソーダー、酸味料(コハク酸)などの食品添加物を一切使用していません。塩や水も加えず、手を加えないで旨味保持に努めています。
図 製造工程
一般の料理酒の問題点
市販の料理酒は、安物のお酒という意味で、おいしい味がつくようなお酒ではありません。むしろ、料理に不向きなお酒なのです。まして飲めるような味でさえありません。その原料米は、例えばクズ米や輸入米のような安い米を使い、できたお酒に米糠を原料に作った米糠アルコールを添加するようなやり方です。徹底的にコストを切り下げたお酒なのです。したがって、ポストハーベスト農薬の汚染の心配や、いわくつきの汚染米が使われる可能性を排除できません。
類似のみりん風調味料にも、その原料の粗悪さ、有害さや製造工程などに問題があります(詳しくは1998年12月第1週カタログ表紙参照)。
また、たとえ純米酒でも、香り良く薄味仕様の日本酒は、料理の隠し味としての効果はあまり期待できません。
―文責 西川 栄郎―