2010年12月1週号 河原照彦さん |
お酢独特の香りがにがてな方に
ムレ香を抑えてフルーティーなお酢を
福井県大野市にある河原酢造の河原照彦さんが造るお酢は、クセがなくフルーティーでさっぱりしています。伝統製法の米酢の重厚な風味を好む人には少し物足りなさを感じるお酢かもしれませんが、その重たさを好まなかった人には朗報になるはずです。
伝統的な製法で造った純米酢には、米酢の宿命といえるムレ香(アセトインやダイアセチルの成分)がどうしても発生しやすく、せっかくの本物のお酢なのに、そのお酢独特の香りがにがてな方がいます。オルターの漬物の生産者である道長さんも、漬物に合うお酢を探し求めて河原酢造のお酢に出会いました。
河原照彦さんは、純米酢のこのムレ香が香りを重たくしていることを何とか解決できないものかと考えてきました。そして、元東京農大の柳田藤治先生の「ムレ香の発生を抑制する米酢」の研究をヒントに、そのムレ香の発生を不快とは感じられないレベルにまで抑える製造法を開発しました。
安全なお米、おいしい水にこだわって
河原酢造さんは、原料のお米はすべて国産米にこだわっています。「老梅 有機純米酢」の原料米は福井・新潟・石川県の契約農家の有機米。「老梅 特別栽培米仕込み」の原料米は福井県産の特別栽培米です。水は地元で御清水と呼ばれる九頭竜川水系のおいしい水を浄水器で漉して使い、製法も伝統的な古式静置発酵です。機械や器具の衛生管理についても、薬剤には頼らず、湯水による洗浄や熱湯消毒など安全な手法を心掛けています。
創業して187年の河原酢造は、越前小京都と呼ばれる福井県大野市にあります。戦時中、親の代は合成酢をやむなく作った歴史もあります。
6代目となる河原照彦さんは、高校時代は家業は嫌だと思っていました。しかし、都会暮らしをしてみて、自然やおいしい食べものに興味をもち、1978年にUターンして26才で家業を継がれたのです。今では醸造の仕事がたいへん面白いと感じておられます。「とくに微生物の発酵する過程や、味が変化するのが面白くてたまらない」とおっしゃっています。
照彦さんはかねてから伝統製法の純米酢のムレ香が気になり、自然食品店に並ぶ多様なお酢も高くてなじみにくいものが多いと思っていました。国内の現状では良質なお酢が入手困難であり、醸造メーカーの立場から、これらを何とかできないものかと研究に取り組んだのでした。
有機米を使った製造を始めたきっかけは、1993年に当時減農薬で米作りをしていた松浦助一さんに出会い、松浦助一さんの「大地に痕跡を残す仕事がしたい」という姿勢に共鳴したことからでした。今では3つのグループの有機米を原料とした有機純米酢造りに取り組んでいます。
酢造には酒造りの工程がありますが、杜氏という仕込みの職人を雇うことなく、かつて社長である照彦さんご自身がその役を担っていたことがあり、現在は後継者である河原泰彦さんが担当しています。それは「自分で納得できる米酢造りをするためには、自らが職人であらねばならない」という信念からです。 河原酢造の生産量は限定的で、大量生産はできないと考えておられます。テレビなどの取材申込みも真摯な報道姿勢の企画でない限り断っています。一過性の消費者の相手はむなしいと思っておられるからです。
農作物の栽培水準を表示するために、オルターでは独自に下記の区分で生産管理の違いを表示しています。
なお、全ての取扱品目は、有機栽培化への3年以上の努力を経た圃場で栽培されたものです。
※オルター農作物栽培基準に準じ、乾物・加工品の一部も表示を始めます。
3年以上有機努力し、JAS認証も取得。農薬・化学肥料の使用はない。
3年以上有機努力し、農薬・化学肥料の使用はないが、JAS認証は取得なし。
3年以上有機努力し、JAS認証も取得していて、化学肥料の使用なし。ただし、JAS別表農薬を使用しています。
3年以上有機努力し、化学肥料の使用なし。ただし、JAS別表農薬を使用しています。JAS認証は取得なし。
3年以上の有機努力を継続中ですが、やむなく一部に化学肥料や農薬を使用しました。
3年未満の有機努力で転換中。今回の栽培には化学肥料の使用なく、農薬不使用か、もしくはJAS別表農薬を使用していることがあります。
放射性セシウム値(134と137の合算)検出下限値1Bq/kgの検査で放射能測定をした結果、
「不検出」が確認された品ものに表示しています。(Not Detected =「不検出」)