2012年6月4週号 岩田文明さん(左)、岩田文祥さん(右) |
野山を守る お茶の有機栽培
茶の名産地
大和茶(一般に宇治茶として出荷されています)の産地、奈良県月ヶ瀬の月ヶ瀬健康茶園、岩田文明さんは、農薬、化学肥料、動物質由来の肥料を使わず、緑茶(煎茶、番茶など)や紅茶を作っています。2001年には有機JAS認証を自家茶園の全ての畑と自家製茶工場で取得しています。畑の土にはミミズやクモがいっぱいいます。
月ヶ瀬は国内の茶産地の中でも、一番茶の収穫時期が最も遅い産地のひとつです。春の訪れが遅く、昼夜の寒暖差のある気候、粘土土壌などの環境は、ゆっくり生長し、おいしい茶ができます。朝霧がよく出ることも、お茶作りに向いています。
茶畑ごとにテーマがあります
丘陵地が連なる月ヶ瀬の変化に富む地形に、20ケ所以上点在する岩田さんの自家茶園は、ひとつひとつの畑に傾斜度、土質、方角、作業効率などの条件が異なっています。岩田さんはその畑それぞれの立地条件を活かし、いろんな品種の茶を植え、多品種、多品目、少量栽培に取り組んでいます。
川に魚を呼び戻したい
岩田文明さんのご両親、岩田文祥さん、美代さんは約30年前から無農薬のお茶作りに取り組んできました。ご両親が無農薬に挑戦されたきっかけは奈良市の消費者グループとの出会いでした。
岩田文明さんは、親の後を継ぐだけでなく、自分の個性を伸ばすことを考えて、紅茶作りに取り組まれました。緑茶としてはなかなか売りにくい二番茶が、渋み(タンニン)が多く、おいしい紅茶作りに向いていることを念頭においてのことでした。この紅茶作りは拙著『あなたのいのちを守る安全な食べもの百科』P137にご紹介しました。
岩田文明さんは小さい頃、近くの川での魚とりが大好きでした。そのハヤ、サワガニ、フナなどが生息していたはずの小川が、いつの間にかいくら探してもドジョウの一匹も見つからない死んだ川になってしまっていたのです。魚たちが姿を消した原因は、田畑に使う農薬や化学肥料の影響、コンクリート護岸、家庭排水だと思いました。将来この川に魚を呼び戻すことが自分の果たすべき役割だと思い、自分の職業は有機農業しかないと決断なさったのでした。
有機製茶を通して、食べる人と出会い、上流、下流という川の線で結び合い、人と人との信頼、都市と農村のバランスを取り戻し、一緒に学びあい、元気一杯にいつまでも暮らし続けられる環境を作っていきたいと考えておられます。その一環として、近在の仲間と一緒に毎月1回、奈良駅前にてオーガニックマーケットに出店しています。
オルターへのご紹介はオルターの野菜の生産者である谷農園の小倉和久さんでした。その谷農園が岩田さんのお茶を小分け・販売を担当し、障がい者作業所の運営費として役立てています。ちなみに文明さんの奥様ルナさんは、オルターのみかん生産者無茶々園の創立者片山元治さんの娘さんです。
農作物の栽培水準を表示するために、オルターでは独自に下記の区分で生産管理の違いを表示しています。
なお、全ての取扱品目は、有機栽培化への3年以上の努力を経た圃場で栽培されたものです。
※オルター農作物栽培基準に準じ、乾物・加工品の一部も表示を始めます。
3年以上有機努力し、JAS認証も取得。農薬・化学肥料の使用はない。
3年以上有機努力し、農薬・化学肥料の使用はないが、JAS認証は取得なし。
3年以上有機努力し、JAS認証も取得していて、化学肥料の使用なし。ただし、JAS別表農薬を使用しています。
3年以上有機努力し、化学肥料の使用なし。ただし、JAS別表農薬を使用しています。JAS認証は取得なし。
3年以上の有機努力を継続中ですが、やむなく一部に化学肥料や農薬を使用しました。
3年未満の有機努力で転換中。今回の栽培には化学肥料の使用なく、農薬不使用か、もしくはJAS別表農薬を使用していることがあります。
放射性セシウム値(134と137の合算)検出下限値1Bq/kgの検査で放射能測定をした結果、
「不検出」が確認された品ものに表示しています。(Not Detected =「不検出」)